CES 2017の会場でもっとも聞かれた単語は、Amazon Alexa対応のスピーカーを呼び出す合言葉「アレクサ (Alexa)」だったという。そのAlexaにいち早く対応したオンキヨーの「VC-FLX1」は、未発売の製品ながら話題性十分、本邦企業のAI/スマートスピーカーにおける嚆矢ともいえる存在だ。今回、VC-FLX1の企画担当者に直撃、開発コンセプトや戦略について話を聞いた。
写真右から、AI/IoT事業推進室 室長の宮崎武雄氏と、副室長の八木真人氏 (以下、敬称略)
――現在、AI関連製品で世に出ているプロダクトとしては「VC-FLX1」がありますが、Siriを音声で呼び出せる「RAYZ Plus」や「RAYZ Rally」もその仲間という理解でいいでしょうか。
宮崎: そうですね。音声でよりかんたんにAIへアクセスできるという意味では、RAYZもAI関連製品であると考えています。スマートスピーカーは家の中で使うものですが、RAYZは外出先においてスマートスピーカーの代わりになりえる存在ですから。常にクラウドにつながっている「AIへの入口」という役割を持つわけです。
――なるほど。それでは、オンキヨーがスマートスピーカーを手掛ける理由は、どこにあるとお考えですか。オーディオメーカーとしての「音」に対する知見があるとは思いますが、すでに数百万台を売り上げている「Amazon Echo」のように、音質重視とは考えにくい製品への対抗となるのでしょうか。
宮崎: 「音」だとは思います。「オンキヨー」「パイオニア」という名前を聞いて「音」以外を連想する方も少ないとは思いますが(笑)。音質という意味での「音」に関してはご期待いただきたいですよね。
――それは出て行く方向の「音」ですね。では、ノイズキャンセリングの音処理など、入ってくる方向の「音」についてはいかがでしょう。
宮崎: ノイズキャンセルは音声を正しく認識するために必要な処理ですが、それ以外にも、マイクのレイアウトやアナログ的な機構にオンキヨーの音に関するノウハウが生かせると考えています。
――スマートスピーカーの音声入出力に関し、オンキヨーならではノウハウを生かした部分にはどのようなことがありますか。
宮崎: スピーカーの前面に、接触防止用の装置を用意することがありますよね? それがサランネットなのかパンチングメタルなのか、孔の大きさが何ミリなのかで、音は大きく変わります。音が入るときにも同じことが言えますから、やはり同様に配慮するわけです。それは弊社のノウハウのひとつだと思います。
――VC-FLX1限定でいうと、どうでしょう。
宮崎: この製品には、新開発の振動板「ODMD」(Onkyo Double Molding Diaphragm)を利用したスピーカードライバーを搭載しています。小型でも効率的に駆動でき、歪みの少ないHi-Fiサウンドを実現できることが特徴です。
八木: こういった小型スピーカーの場合はドライバーを小さくせざるをえず、なんとか中高域は出ても低域が出ないことがありがちです。音楽再生の場合、しっかり低域も出て理想的なバランスとなり気持ちのいい音になるのですが。このODMDはピストンモーションの領域が拡大されしっかりとした低域が出るうえに、大入力時の音の崩れを抑制できる、といった特性があります。
――スマートスピーカーというと、AI機能に目が向きがちで音楽再生には使われないというイメージもありますが。
宮崎: すでに1千万台ほど販売されているらしいAlexa対応スピーカーのうち、「Amazon Echo Dot」というスピーカー機能を最小限にした製品がありまして、それが現在の売れ筋です。しかし、ある調査のデータでは、スマートスピーカーユーザーのほぼ9割が「音楽を聴く」ことを利用目的に挙げています。
八木: 米国のスマートスピーカーのユーザーを対象にした弊社の調査によれば、約7割が購入後にもっと音楽を聴くようになったそうです。Amazonの音楽ストリーミングサービス「Amazon Music」をきっかけに、音楽に触れる機会が増えたのでしょう。話しかけるだけで好きな曲を再生できるという体験が、そこに影響しているはずです。3割のユーザーがスマートスピーカー購入後にSpotifyプレミアムなどの有料サービスに加入したというデータが、それを裏付けています。
宮崎: スマートスピーカーユーザーの5割が、2台目のスマートスピーカーを欲しがっているというデータもありますから、音がいい製品のニーズはあるはずです。そこに弊社ブランドのスマートスピーカーの存在意義があるのではないでしょうか。