――それは会見やイベントですか?
それもそうですし、バラエティ番組でコメントを求められた時、他のみなさんと同じ答えしか思い浮かばない時に「どうしよう!」と(笑)。自分の引き出しの少なさを反省しますし、そういうことばかりに気を取られるんじゃなくてもっと楽しめばよかったなと。とにかく「楽しむこと」が一番大切だったりするんですよね。
――こういう取材はいかがですか? これまでたくさん受けてこられたと思いますが。
取材だったらまだ大丈夫ですけど、インタビューによっては自分の思いと違う部分が誇張されたりするものもじゃないですか? しょうがないことなんですけど、見出しが大きくなっちゃったり。伝え方がよくなかったのかなとか……。インタビューでも舞い上がっちゃって。プライベートの話ばっかりしちゃって。そういう失敗もいっぱいあります(笑)。
――仕事仲間や関係者との接し方はいかがですか?
私はコミュニケーションが本当にヘタだと思います。ヘタだからこそモデルの仕事が面白かったんだと思います。こんなにヘタでも、ファッションとメイクと背景で自分の思っていることが表現できる。口下手な分、写真で表現できるのがすごく楽しいと感じました。
――どちらかというと人見知りですか?
そうです。モデルの仕事をはじめてから「こびたくない」「ぶりっ子」に思われなくないとなると、すごくサバサバ言ってしまって、聞く人にとっては厳しくとられたり、きっと誤解されることも多かったんじゃないかなと。単なる照れ隠しなんでしょうが、そういう失敗もありました。反対によく思われようとして優しく受け答えすることを心がけていると「ぶりっ子」に思われてしまったり。人との接し方って、難しいですよね。いかに自然でいられるかが大事なんだと思います。
――一方で、文字と向き合う時間が増えましたね。
最近はそうですね。前作(『永遠とは違う一日』)は缶詰状態で産みの苦しみをすごく味わいました(笑)。今回は繊細なテーマを扱ったので、モデルにさせていただいた方が不快な思いにならないか、何度も何度も確認して。自分の創造物だけの話ではないので、そういう責任は強く感じました。
――子供向けに伝えることの難しさは感じましたか? わかりやすい表現に変える作業もあったと思います。
柔軟で素直な表現を意識して、擬音語や擬態語を使いました。カエルの「ぐあぐあ」とか。そういう言葉遊びは、とても楽しかったです。主人公と同じ小学生ぐらいの子から、読んで欲しいですね。大人の方でも「好きなフレーズがあった」「響いた言葉があった」と言ってもらえたので、年齢関係なくいろいろな方の手に届くといいなと。お子さんがいらっしゃる方でも一緒に読んでいただけたらうれしいです。
――本作で印象に残ったのが、海斗くんが同学年の桜ちゃんに送った「起きてもないことを心配してもじもじしてたって仕方ない」というメッセージでした。
私自身、起きてもないことを考えるタイプ。不安症というか。不安なことを考えておけば、後で傷つかなくて済むみたいな。でもこれ、本当はやらなくてことですよね。例えば、嫌われるかもしれないから連絡しないとか。仲良くなりたいなら、素直に自分から歩み寄るべきなんです。
――そして、この物語の深部にあるのは障害を持った方々との接し方です。個人的には「普通に接する」を心掛けているのですが、この本を読んで「普通」とは何だろうと。現時点でいいのですが、押切さんはどのようなことを心掛けていらっしゃいますか?
私も探求し続けていることです。「壁を作らないように」と思っている時点で壁ができてますよね……。お互いに意識せずにオープンに、自分視点じゃなくて相手の立場をまず見てみることを心掛けています。目を配ったり、心を配ることで見えてくるものとかあると思うので、それをしっかりと掴んで、相手の心地良いところに気づきたい。まずは、受け止めることが大事なんだと思います。それをやっていくことが本当のコミュニケーションにつながる……真実を求めようとすることが真実につながるみたいな、そういう難しいテーマだと思います。
――答えが見つからないテーマを扱った今回の著書。次回はどのような作品になるのか、楽しみです。
小説はまた書きたいと思っています。その時の自分が不思議に思ったこととか、自分で本当に解決できないことがテーマになることが多いです。それから、書いている途中に自分の言いたかったことが見つかったり、これまでの良い出会いを意識的に思い返したりすることもできます。いちばん好きなのは「夢」をテーマにした物語です。
――今はどんな夢を描いてますか?
目の前の取り組むべきことを深めていきたいです。その上でお声をかけてくださる方のお役に立てればと思います。
自分の好きなことをやっていくことで人に喜んでもらえることはあると思うので、そこにフォーカスを当てて読んでいただければと思います。「好き」はいろいろな壁を乗り越えることができる。文章を書くのが大変な時もありますけど、やっぱり好きなこと楽しいことだからこそ頑張れるんだと思います。
■プロフィール
押切もえ
1979年12月29日生まれ。千葉県出身。高校生の頃からティーン誌で読者モデルとして活動をはじめ、ファッション誌『CanCam』(小学館)の専属モデルを経て、現在は2006年に創刊した姉妹誌『AneCan』の専属モデルを務め、2016年に卒業。テレビ、ラジオ、コラム執筆など多方面で活躍するほか、『モデル失格』『心の言葉』など著書も多数出版。2015年に『浅き夢見し』で小説家デビューを果たし、2016年にも『永遠とは違う一日』を出版した。