一方で、メルカリで思い起こされるのは4月に起きた「現金売買騒動」だろう。メルカリ上で現金や、現金を連想させる商品が販売され、マネー・ロンダリングに繋がるとして大きく報道された。ブランド品は取引額が大きく、プラットフォームの信用力がものを言うこともあり、サービスリリースに合わせて「偽ブランド品撲滅への5つの取り組み」をWebサイトで公開した。

具体的には

  • ブランド権利者の協力による出品パトロール

  • カスタマーサポートにプロ鑑定士が在籍、真贋鑑定

  • AIなどによる疑わしい出品の排除

  • 捜査機関や官公庁との連携

  • 偽ブランド品補償

を行っている。メルカリでカスタマーサポート担当執行役員を務める山田 和弘氏によれば、現在は東京都仙台、福岡で250名のカスタマーサポート要員が在籍しており、1~2年で倍の500名体制に拡充する予定だという。

サポート要員の多くは、出品者と購入者の商品状態の認識齟齬を埋める対応がメインで、出品時の違反商品、例えば現金出品などは巡回パトロールに加えてAIも活用し始めているという。特に「ゲームアカウント売買は、ほとんど人の手を介さずに検知できている」(山田氏)とのことで、今後は他の分野でもAI化をさらに進めていくとしている。

アプリ跨ぎをAIで解決?

ソウゾウで代表取締役社長を務める松本 龍祐氏は、今後も機能特化型のC2Cや、サービスの個人間取引を広げていくと話す。

「アプリを増やしつつ、ユーザーの利便性を損なわずにIDを共通化するほか、ユーザーの信用情報となる評価の外部提供、決済システムの共用などを進めていく」(松本氏)

松本氏はC2Cそのものが「プラットフォームの立ち上げに時間がかかる」ことから、メルカリの基盤を活かしたサービスを展開したい企業があれば積極的に連携、あるいはメルカリファンドを通した出資などを行っていくと語る。

すでにファンドからは語学レッスンサービス「フラミンゴ」などへの出資があり、基盤を活用しているという。メゾンズについても、前述のスマオクをメルカリ風に衣替えしたものといえるが、そこにメルカリIDによるログインや、商品のメルカリ掲載といった高い親和性を売りにしている。

こうしたアプリを個別にリリースすることで、ターゲットユーザーへの訴求は強くなるものの、アプリインストールへの障壁が生まれる。この点について松本氏は、すでにメルカリアプリで行っているアッテやカウルへの送客を、AIなどを活用してユーザーがあまり意識せずにそれぞれのアプリを利用できるようにしたいと語る。現在でも、掲載後時間がたった商品をアッテで掲載、エンタメ商品であればターゲット性の高いカウルで掲載するようにユーザーへ促すことで、実際に取引確率が上がっているという。

カスタマーサポートから他アプリへの送客、商品カテゴリの判断までAIの活用を進めるメルカリの取り組みがうまく行けば、一つのモデルケースとなりそうだ。

(左から)ソウゾウ 代表取締役社長 松本 龍祐氏、同社 執行役員 原田 大作氏