「或るマンション」
就職先も決まらず、仕方なく清掃会社の契約社員として働いている稲葉秀一(手越祐也)。古びたマンションを担当すると、そのエレベーター遭遇した不気味な中年男に髪の長い赤い服の女が張り付いており、直後にその男がマンションから飛び降り自殺を図ってしまうところから話が展開される。

――さて、今年は5本の作品が放送されますが、1本ずつ見どころを教えてください。まず、手越祐也さん主演の「或るマンション」ですが、手越さんはホラー初挑戦ですよね。

手越くんは元気で活発なイメージがあると思うんですけど、今回はほとんど笑いません。。だから、手越くんらしくないお芝居のキャラクターが新鮮なのと、手越くん自身ドラマに出るのは久しぶりらしいので、その部分でも新鮮に感じるんじゃないかと思います。あと、ストレートに怖いです。

「箱」
百年以上開いていないという先祖代々守られてきた蔵に、ポツンと1つだけ箱が。家主は箱の正体を明かしてくれず、ある夜、我慢できなくなった間宮(野村周平)は、その箱に手をかけてしまう。

「お墓はどこでしょうか」
「家長が『白い服の女を見た』ということを人に話すと、その家長は必ず死ぬ」という言い伝えがあるにもかかわらず、家族でお盆の墓参りに行った長峰修(遠藤憲一)は、白い服を着た女を偶然目にし、そのことを家族に話してしまう。

――「箱」に主演される野村周平さんも、普段は根っからに明るい人ですよね。

そういった意味では、本人とは真逆のキャラクターですね。「驚いている表情がおもしろくならないように」と言っていましたが、そこは本当に見事にできています。作品としてはちょっと変化球ですね。ちょっとミステリータッチになっているので、怖い話が苦手な人でも見られる作品になってるんじゃないかなと思います。

――「お墓はどこでしょうか」の主演は遠藤憲一さんですが、強面の人が怖がる顔はなかなか見られません。

あれくらいの年齢の方が幽霊に遭遇すると、実際にどうなるんだろうという観点からも見ていただけると面白いと思います。遠藤さんは「演技しすぎてしまうと、見ている方が引いてしまうのではないか」と言っていましたが、抜群のさじ加減でしたよ。これもホラーとしては変化球ですが、分かりやすい幽霊も出てきて、バランスの取れた怖い話になっています。

「コール」
北川景子演じる看護師が勤める総合病院の"死に部屋"と呼ばれる417号室に、弟(志尊淳)が大ケガをして入院することになる。

「影女」
杉咲花演じる河村佳奈子が、憧れの一人暮らしを始めるが、その寝室の壁にある黒い小さなシミが日に日に大きくなり、まるで人のような形になっていく。

――北川景子さんは「コール」で看護師役に挑戦されています。

これに関しては、ドラマ的な脚色をしています。北川さん演じる姉の看護師は、確執のある弟が「死に部屋」に入院する時に、どういう風に振る舞うのかという要素がすごく面白かったんですよ。もちろん怖い要素もありますが、そういう人間の葛藤や心情的な揺れを描いています。

――杉咲花さんの「影女」は、あらすじを読んでゾクッとしました。

最初は部屋の白い壁に小さい黒い模様みたいなのがって、それがだんだん人の形になっていくという話ですが、そんなことがあったら、もう絶対住みたくないですよね(笑)。僕だったらすぐ出ていきますよ。この話は、ある人がある人のことをすごく恨んでるから発生するというのではなく、全くそうではない関係性で起こることを描くので面白いなと思いました。

――今回主演の5人は全員『ほん怖』初出演ですね。今やテレビで本格的なホラードラマをやるのは『ほん怖』くらいしかないと思うのですが、怖がる演技の経験があまりなかった皆さんに、戸惑いはありましたか?

最初の打ち合わせの時に、怖いものを見たときのリアクションの具合とか、どれくらい大きく演じればいいのかというのは、皆さん結構慎重に確認していましたね。あらためて、今年はなかなか旬な5人がそろったと思っていますので、ぜひご覧ください。

後藤博幸
1968年に新潟県出身。早稲田大学卒業後、93年にフジテレビジョン入社。最初は技術局に配属後、ドラマ制作に異動し、99年に『ほんとにあった怖い話』で初プロデュース。その後は『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』『CHANGE』『任侠ヘルパー』などをプロデュース。

(C)フジテレビ