より多くの空気をエンジン内へ送り込む装置としては、これまでもターボチャージャーやスーパーチャージャーといった過給装置が、いわゆるダウンサイジングのガソリンエンジンや、ディーゼルエンジンでも利用されている。マツダでは他に、「プレッシャーウェーブスーパーチャージャー」といって、排気を利用した過給装置を開発・量産化した経験を過去に持つ。マツダは現行のガソリンエンジン「SKYACTIV-G」で自然吸気にこだわったが、過去には過給の知見を多く持っているのである。
その上で、SKYACTIV-Xの完成には、最終的にそれらの技術要素をいかに制御でまとめ上げるかが重要になったはずだ。それは、世界の自動車メーカーが苦労した部分でもある。
ダウンサイジングターボとは違うマツダの考え方
私が推測するに、マツダはSKYACTIV-Gで、ガソリンエンジンの圧縮比を高める苦労をし、そこで得た経験を、SKYACTIV-Xの制御を開発するうえで役立てたのではないだろうか。
そもそも、ガソリンエンジンの圧縮比を高め、ディーゼルエンジンの水準に近づけること自体、難問だったのだ。それをマツダは、SKYACTIV-Gで解決してみせた。マツダがSKYACTIV-Gで高圧縮比化に成功したあと、他の自動車メーカーもガソリンエンジンの高圧縮比化を始めたが、まだマツダほど圧縮比を高められていないのが実情だ。
その差が、今回の世界初となる火花着火と圧縮着火の両立、つまりSKYACTIV-Xに結びついたのだと思う。まさにそれは、究極のガソリンエンジンとは何かという原理原則に立ち、根本を追求するマツダの開発姿勢に負うところが大きい。
燃費を上げるため排気量を小さくし、それで不足する出力は過給で補うという、組み合わせ技術でしのいだダウンサイジングターボとは、そもそも技術開発の志が違うのである。
さて、近々そのSKYACTIV-Xに試乗する機会が設けられるという。その実力はいかに。また、開発の鍵はどこにあったのか。技術者に直接話を聞く機会もあるだろう。世界初のガソリンエンジンとの対面が待ち遠しい。