将来を見越すとMVNOの立場では限界も

それは事業の将来を考えた場合、MVNOという立場には限界があるということだ。実際玉川氏は課題の1つとして、「NB-IoT」など携帯電話のネットワークを活用したLPWAや、次世代通信の「5G」を用いたサービスを、素早く展開できないことを挙げていた。

KDDIはNB-IoTなど携帯電話網を用いたLPWAを今年度中に商用化するとしていることから、そのMVNOがこれらの通信方式を利用できるようになるのはさらに先のこととなる

これらのサービスをMVNOが利用するには、まず大手通信会社が対応するネットワークを整備し、さらにMVNOに貸し出す許可を下すまで待たなければならず、時間がかかってしまう。NB-IoTや5GなどはIoTを支えるネットワークの“本命”とも言われるだけに、いち早くそれらを利用するには大手の傘下に入るのが近道と判断したようだ。

そしてもう1つ、MVNOの限界点として挙げられるのが、携帯電話のコアネットワークのうち自社で構築できるのはごく一部にとどまり、大部分は携帯電話会社のネットワークに依存せざるを得ないことだ。ソラコムのクラウド技術をネットワークのより広い範囲で生かすには、MVNOに回線を貸す携帯電話会社の側に入る必要があったわけだ。

実際KDDIは今後、同社の次世代コアネットワークの構築に、ソラコムの技術や知見を生かす考えを示している。ソラコムの技術は、ネットワークの仮想化など最近のネットワーク技術のトレンドに通じる部分があるだけに、KDDIとしてもクラウドの技術に強みを持つソラコムを存分に生かしたい狙いがあるようだ。

KDDIはソラコムが持つクラウドの技術を、自社の次世代ネットワークに活用する方針も示している

KDDIとの接点にトヨタの存在あり

だがそうした狙いを実現するには、KDDIだけでなくNTTドコモやソフトバンクの傘下に入るという選択肢もあったはずだ。なぜソラコムは、数ある通信会社の中からKDDIを選ぶこととなったのだろうか。そこに大きく影響しているのは「未来創生ファンド」の存在であろう。