――「全日本国民的美少女コンテスト」にはお父さんが応募されたそうですね。
芸能界への憧れもそこまではなくて、私にとっては「まさか」。母に写真を撮ってもらって「送ってみた」というか。本当に軽い気持ちでした。家の中で新聞の広告を敷いて、靴を履いてその上に立って応募用の写真を撮りました。何か特別なお稽古をしていたわけでもないですし、部活はソフトテニス。本当に普通の女の子でした。
――そんな普通の女の子の人生が、ある日突然激変した。
そうですね。所属してからは学業優先で、週末はレッスンの日々。その翌年に「第9回全日本国民的美少女コンテスト」が開催されて、第8回と第9回の出場メンバーでオーディションがあって、アイドルグループ「美少女クラブ21」のメンバーになりました。
この世界に入っての最初の肩書きは「アイドル」でしたが、全く実感がなくて。「仕事」という感覚もありません。学校の延長線上で、みんなとワイワイやっている。そんな意識でした。「仕事」として自分を見つめ直すようになったのは、やっぱり先ほどお話した『ドクターX』が大きくて、それまでいろいろな作品に出させていただきましたが「なんてもったいないことをしてきたんだろう」と悔しくなります。今でも後悔しています。
学校生活の合間に取り組んでいたこともあって、「仕事」としてきちんと考えられなかった。美少女クラブのほとんどのメンバーが十代でドラマやバラエティで活躍して、私は置いていかれている状態で。一度、所属部署が変わってオーディションを一人で受けた時期もありました。メンバーのレッスンとは別のレッスンにも参加していたのですが、周りと比べて自分は劣っているから両方参加させられている。そんなふうに思い込んでどんどん自信がなくなって……。
働くモチベーションは「親孝行」
――よくここまで耐えられましたね。「辞める」という選択肢はなかったんですか?
辞めるタイミングが分からなかったんです。両親からは「辞めたかったらいつでも辞めていいよ」と言われていたんですが、辞めた時に何をするのかも考えられていなかったですし、かといって全く仕事がないわけでもないし、一つひとつの仕事は楽しい。一度でも完全に心を折られていれば、早めに変わることができたんだと思いますが、私自身がそういう向き合い方だったので……悩みを抱くほど真剣じゃなかったんです。
これだけやってきてやっと? そう思われる方もいるかもしれません。きっと気づくタイミングはあったと思います。もともとは負けず嫌いな性格なのですが、美少女クラブではずっと後ろの方でしたが、いつの間にか「私が前に出る」という気持ちがなくなっていました。芸能界を生き抜く上では、何よりも大切なことなのに。みんなに先を越されることをうらやましいとも悔しいとも思わず。
――お父さんは娘の人生を変えたことになるわけですが、そんな娘の姿を見て何か声を掛けられたことは?
「辞めたかったらやめていい」と時々言ってくれていました。そんなに多くはありませんでしたが。今ではそれを思い出して、逆に「やってやろう」と思います。私が何かを言われることは構わないですが、ひょっとしたら両親が周囲から何か言われているかもしれません。このまま中途半端だと、否定的な見方をする方の思う壺だと思いますので、中途半端はやめにして、「内藤理沙」を一人でも多くの方に知ってもらえることが親孝行にもつながるんじゃないかなと。だから、やれるまでやる。そういう思いです。
――インスタに登場しているお父さんは「イケメン」、お母さんは「姉妹?」と話題になっていて、すごく仲が良い雰囲気も伝わります。今後は、そんなお二人のためにもという思いがあるわけですね。
一人っ子で、すごく仲が良いです(笑)。やっぱり両親が自慢できる娘としての「内藤理沙」になりたいと思っていて、両親には絶対に後悔させたくないし、悔しい思いをさせたくない。一人っ子なのに、たくさん迷惑や心配を掛けてきたと思います……。デビューが遅かったので他の子と比べて周りから言われたこともあったと思うんです。私としては、そっちの方がつらい。両親が周りの人から「さすがだね」と言われるような娘になりたいです。
■プロフィール
内藤理沙
1989年1月10日生まれ。群馬県出身。A型。2017年より「ぐんま観光特使」を務める。2002年、第8回全日本国民的美少女コンテストに出場し、翌年にアイドルグループ「美少女クラブ」に所属。『37歳で医者になった僕~研修医純情物語~』(12年・フジテレビ系)で女優デビュー。『東京全力少女』(12年・日本テレビ系)、『ビブリア古書堂の事件手帖』(13年・フジテレビ系)、『お天気お姉さん』(13年・テレビ朝日系)、『私の嫌いな探偵』(14年・テレビ朝日系)、『あすなろ三三七拍子』(14年・フジテレビ系)、『ドクターX 外科医・大門未知子~』(14年・テレビ朝日系)、『天使と悪魔』(15年・テレビ朝日系)、『エイジハラスメント』(15年・テレビ朝日系)、『ダメな私に恋してください』(16年・TBS系)、『ドクターカー』(16年・日本テレビ系)、『グ・ラ・メ! ~料理の料理番~』(16年・テレビ朝日系)、『忠臣蔵の恋』(17年・NHK)、『女囚セブン』(17年・テレビ朝日系)などに出演。