海外では当たり前? 日本に新たなクルマ文化は根付くか
「マツダが目指すのは、時代を超えてクルマを愛してやまない方たちと一緒に、クルマのある人生の楽しさ、“走る歓び”を追求していくこと」。山本氏はマツダが打ち出すメッセージ“走る歓び”を引用しつつ、同社がロードスターの復元に取り組む意義を語った。この事業に取り組む理由としては「(顧客が)大切にしているクルマに、長く乗ってもらいたいというのが一番」だそうで、「ビジネスなので損してはいけないが、儲けることが目的ではなく、ファンとの絆づくりを進めたい」というのが本音のようだ。
マツダはブランド価値の向上により、クルマの下取り価格を高める販売戦略を進めているが、ロードスターのレストア事業も、ブランド価値を重要視するマツダの取り組みとして、その販売戦略と一脈通じるところがある。山本氏はレストア事業を通じて「顧客とマツダの絆ができれば、ブランドの成長につながる」と話す。
また山本氏は、クルマを長く大事にする文化を日本に根付かせることで、「自動車業界に少しは貢献したい」とも語る。山本氏によると、古いクルマのレストアは「海外ではポルシェもベンツも皆やっている」そうで、マツダとしては、日本の自動車業界でメーカー自らが行うレストア事業に先鞭をつけたいとの思いも持っているようだ。
古いクルマを愛でる文化の醸成を目指すマツダが、「AUTOMOBILE COUNCIL 2017」で展示していた車両。手前はマツダ初のロータリーエンジンを搭載した量産車「コスモスポーツ」(1967年発売)。奥はRX-7の初代となった1978年発売の「サバンナ RX-7」だ |
クルマにコモディティ化の危機、個性的なクルマづくりを続けるには
クルマは今後、電動化し、自動化していくと言われている。将来のクルマが同じようなモーターとバッテリーを積み、運転までシステム側でこなすようになった場合、クルマはコモディティ化の危機を迎える。
初代ロードスター(NA型)は1989年に誕生し、国内で約12万台が販売された。発売から28年後の今、日本では約2万3000台のNA型が現役で走っているという。果たしてコモディティ化したクルマは、初代ロードスターのように、長く所有されるクルマとなり得るのだろうか。この時代にロードスターのレストアを始めるマツダのことだから、クルマのコモディティ化によるブランドの埋没という結末を回避する策についても、今が正念場と考えを凝らしているに違いない。