お宝があっちにもこっちも
「わーい、素晴らしい。何だか分からないぞ、ここは」 |
銭湯に向かう時は気が付かなかった。蔦で覆われたそのお店は「須山文房具店」。ショーケースに大量の手回し鉛筆削り器。店内に停めてある車。年代物のスロットカーに、750ライダー(※2)のポスター。積み上げられた文具は、失礼ながらどれも売り物には見えない! 声をかけたところ、奥から店主須山さんが笑顔で登場です。
「古いの見たい? どんなもの見たい?」と聞かれたので、「古い鉛筆削りが気になって、見させていただけますか?」と答えつつ、心の中では「全部! 全部見せて!!」と答えていました。鉛筆削り器の修理の話。鉛筆用箔打ち機の話。マブチモーターの話に、50年前の英国製塗料の話。木製ボールペンの話。ご近所だという750ライダーの作者、石井いさみ先生のお話。面白すぎて止まりません。
ここでようやく蒲田の取材をしていますと自己紹介。そう、偶然のぞいたものですから、取材申請をしていないのです。「須山家は670年くらい前から蒲田駅前にいたのですが、昭和33年に拡張工事でこちらに越してきまして」「え~そうなんですか~~?」と盛り上がり、大正時代の地図を見せていただいたところでタイムアップ。屋上取材の時間がきたので、お礼を言ってお店を出ました。そう! 今日の最終目的地は観覧車です。
●information
須山文房具店
住所:東京都大田区西蒲田7-11-3
アクセス: JR・東急池上線・多摩川線「蒲田駅」から徒歩8分
くるくる回る蒲田の可愛いランドマーク
最終目的地、東急プラザ蒲田屋上「かまたえん」に到着。エレベータが開き一歩踏み出すと、電車形のマイクロキッチンカーが並び、テーブル席が広がるその向こうに、それは待っていました。「幸せの観覧車」は高さ13m、4人乗り9台が3分半で一周するミニ観覧車です。9色のお花が陽を受けながらくるくる回ります。なんてチャーミングなんでしょう。
東急プラザ蒲田の屋上観覧車は、昭和43(1968)年に設置され、初代の通称「お城観覧車」から平成元(1989)年、二代目の「グレ太の観覧車フラワーホイール」と45年間愛され続けてきましたが、2014年3月リニューアルのため閉鎖の危機を迎えます。存続を望む声に応え、2014年10月カラーリングを新たに復活したのが現在の「幸せの観覧車」(出典: 東急プラザ蒲田)。
広報の方にうかがうと、公募で決まった名称には「世代を越え、幸せな思い出を繋ぐ場所としてあり続けられますように」との願いが込められているそうです。リニューアルを経て親子三世代での利用も多く、蒲田のランドマーク、都内唯一の屋上観覧車として愛されています。
それでは搭乗してみましょう。赤に乗ります。観覧車はミニでも屋上なので素晴らしい眺め。足元から東急多摩川線、東急池上線が延びていき、遠くには富士山の裾野が見えています。あっという間の3分半。幸せにつつまれた後は、お待ちかねのビヤガーデンです。
ビヤガーデン「かりぶえん」は、中南米料理をビュッフェでいただけるスタイル。タコスをお好みでいただきます。チリコンカルネ、トルティーアとボリュームたっぷりのドネルケバブと目移りします。決まった料理が出てくるビヤガーデンとは違い、自分でトッピングできるのが楽しい。僕はチリコンカルネにドネルケバブ、サルサソースでタコスを作ってみました。日陰のテーブル席から西日に映る観覧車を眺めながら、生ビールとラムコークで乾杯!
●information
かまたえん
住所:東京都大田区西蒲田7-69-1 東急プラザ蒲田 屋上
東急プラザ蒲田へのアクセス: JR・東急池上線・多摩川線「蒲田駅」直結
シラサキ「お疲れさまでした~。それではここで」
担当Mさん「お疲れさまでした。あらどちらに?」
シラサキ「ちょっと寄りたい店が。『もつ焼き いとや』と言いまして……」
※2)750ライダー
昭和50(1975)~昭和60(1985)年「週刊少年チャンピオン」連載。最初は硬派なバイク乗りの話だが、しだいに掃除をサボる話になる。オイルとコーヒーの香りがする漫画
筆者プロフィール: シラサキカズマ
1966年広島県生まれ。筑波大学芸術学群洋画科卒業。1990年よりイラスト、キャラクターデザイン、アニメーションと幅広く活動。「シュール&ピース」なキャラとポップな世界観が特徴。代表作「ミカンせいじん」。オフィシャルサイト「mikan-seijin.com」。