最後に、ここ数年で大きな注目を集めているVRについて、マーケティング活用の可能性を伺った。メンデルス氏は、オーストラリア政府観光局が360度動画を使って日本向けにコンテンツマーケティングを展開している事例を紹介した上で、「不動産や旅行業・観光業などが、既にVRをマーケティングに取り入れている。まだ試行錯誤の段階だが、これから活用が増えていくのではないか」と今後に期待を示した。

オーストラリア政府観光局が展開する360度動画

確かに、不動産であれば遠隔地の顧客に対して物件の内覧をバーチャルに体験できる環境を提供したり、観光産業であれば観光地の雰囲気をバーチャルに体験してもらうことで実際に行きたいという動機にしてもらったり、可能性は大きいように感じる。しかし、目的を明確にしないまま“まずやってみよう”という安易な発想でVRをマーケティングで活用することには、慎重になるべきだと言えるだろう。この点についてメンデルス氏は「マーケティングはあくまで企業やブランドのストーリーやプロダクトとのエンゲージメントだ。VRによって人の興味を引き付け、そしてその先でどうするのかを考える必要があるのではないか」と語った。

メンデルス氏の様々な言葉から見えてくるのは、動画マーケティングはマーケティングプロセス全体の中でどのように機能させていくべきかを考えていくべきであり、そしてその改善のためにはデータを活用したインサイトの分析と最適化が不可欠だということだ。ただYouTubeに公開して満足してしまっていては、動画マーケティングが本来発揮すべきポテンシャルの大部分を活かしきれていないとも言えるのかもしれない。

「Brightcoveはこれからも、カスタマージャーニーの中で機能するマーケティングエコシステムの構築という動画マーケティングが目指すべきビジョンの実現に向けてサポートをしていく。そしてマーケティングにおける動画利活用の効果を最大化できるよう啓蒙していきたい」(メンデルス氏)