EMS事業は「さまざまな業界から引き合いがあり、売上も好調。成長できる土壌が出来上がった」(吉田氏)。VAIOという単一企業として生き残るために組織のスリム化、製造部門と販売部門の一体化も推し進めた結果、「社員が日々の売上を確認できるようになり、自分たちが会社を守るという意識が高まっている」(吉田氏)。
この好循環を途絶えることなく継続するため、この日公表したのが中国市場への参入とVRソリューションの提供だ。
中国市場へは、リアル店舗の展開ではなく、同市場最大級のECサイト「JD.COM」と提携し、VAIO ZクラムシェルモデルとVAIO S13を販売する。当初は「安曇野製造、フィニッシュにこだわる」(VAIO 執行役員 副社長 赤羽 良介氏)とのことで、日本製の高品質を売りにする予定だ。
一方のVRソリューションでは、VR関連のソフトウェア開発、コンテンツ制作にノウハウを持つABALと提携、出資する。法人向けのハード・システムの導入・保守や、コンテンツ制作、企画などフルパッケージを用意することで「VRといえばVAIOとなれるよう」(赤羽氏)としており、第三のコア事業として成長を目指す構えだ。
ただしVRソリューションは、自社開発のVR機器を「必ずしも提供することは考えていない」(吉田氏)。ソフトウェア開発やコンサルティングといった利ざやの大きい事業だから参入するといった下心も見えるものの、どちらかと言えばEMS事業における「安曇野工場の強み」を活かした事業だとVAIOは説明する。
「VRは単に導入して終わりというものではない。専用のハードウェアをともなう以上、機器のチューニングや、選定フェーズのコンサルティングニーズがある。そこに安曇野の知見を活かせる」(赤羽氏)