VAIO 代表取締役社長 吉田 秀俊氏

VAIOは8月1日、新社長就任挨拶と経営方針の説明会を開催。営業利益が前年の3.2倍になったことを明らかにした。6月に就任した代表取締役社長 吉田 秀俊氏は「(営業利益の拡大に)嬉しい3周年を迎えられた」と喜びを口にする。昨年の第3期決算公告によれば、2016年5月期の営業利益は1億8000万円であったため、3.2倍でおよそ5億7600万円の利益を確保したとみられる。

新社長の吉田氏は、JVCケンウッド一筋で取締役社長まで勤め上げた後、2011年に車載向け機器のオプトレックス副社長、2012年には電子部品のエルナーの社長を歴任した。前社長の大田 義実氏は商社の双日出身であり、「メーカーとは何か」を知らない人物と評されたこともある。だからこそ、高い技術力を背景としたEMS事業の立ち上げや、海外展開への足がかりを再び築けたと言える。では、吉田氏に求められる役割はどこにあるのか?

新社長の趣味は自作パソコン

吉田氏は、モノづくりの現場を知っているからこそ、「一緒に汗をかき、VAIOを盛り上げていきたい」と現場主義を貫く姿勢を冒頭から強調した。

「長いこと、家電メーカーで海外営業をやってきた強みが(自身には)ある。デジタル変革が進む中で、苦戦した歴史と経験に加え、直近の7年間は電子部品や車載機器メーカーで、品質と信頼性の重要性について学んだ。ハンズオンによる会社経営で、細かいところまで見ていきたい」(吉田氏)

趣味は自作パソコンで、現在稼働しているメンテナンス性を重視した観音開きの扉付きデスクトップPCで12台目。初めてPCメーカーに着任するとあって「VAIOから話をいただいた時は、喜びとともに光栄に感じた」(吉田氏)。その喜びを最大化するための自身に課したミッションは「4年先、5年先を見据えた企業価値の向上。『VAIOの価値』を高めること」と吉田氏は定義する。

そもそもVAIOはソニーのPC部門であり、Appleの故スティーブ・ジョブズ氏がVAIOを気に入っていたように、プレミアムブランドとしての地位を確立していた。しかし、売上規模を求めるあまり、価格競争や規模を取る普及帯のラインナップ拡充に追われ、慢性的な赤字体質が続いていた。その結果、経営資源の「選択と集中」の煽りを受け、2014年にソニーから切り離された過去がある。

このプレミアムブランドの地位を改めて取り戻すのが、VAIOの価値を高めるという目標でもあるだろう。ただし、PC専業メーカーでは製品の成功に収益が左右されるため、いつまでも業績が安定しない。そこで前社長の大田氏が始めたのがEMS事業、IT製品の受託開発だった。