周到な「地ならし」で「新しいiPhone」を迎える

アップルは中国市場においては特に気を使っている。

アップルは珍しく、iPhone 7のテコ入れ策として、リリースから半年たった2017年3月に、赤い(PRODUCT)RED Special Editionを投入している。しかし中国向けには、AIDS撲滅キャンペーンをうたわない、単なる「赤」モデルとして発売した。

(PRODUCT)RED Special Edition(出典:アップルプレスリリースより)

その理由は、中国国内におけるAIDS患者の増加と、これに対する政府への批判が存在し、その批判を助長する可能性を排除するため、と考えられる。中国では特に人気が出るであろう赤いiPhoneの販売機会を損なわないためだ。

また、中国のサイバーセキュリティ法への対応にも敏感だ。アップルは同法で定められている中国のユーザー向けのデータを中国国内に保存しなければならない、という規定に沿うため、10億ドルを投じてデータセンターの建設に取り組んでいる。

同法は中国政府における検閲強化につながるとして諸外国から批判の対象になっているが、ユーザーデータやメッセージの強力な暗号化を理由に、サイバーセキュリティ法遵守への理解を得ようとしている。

直近では、中国のApp StoreからVPNアプリを削除している。これも、許可を得ていないVPNアプリが違法となったことに対応したもので、カンファレンスコールでこの件について尋ねられたティム・クックCEOは「中国による強力なインターネットアクセスへの取締りが、一時的なモノであることを願う」と苦言を呈していた。

中国市場が待ち望んでいる「次のiPhone」の波を確実なものとするため、アップルは非常に神経質に周辺の環境や条件を整えていることが分かる。2017年7月18日には、Isabel Ge Mahe氏を、新設するポストである大中華圏担当副社長に指名し、今年夏後半から上海でその任にあたることを発表し、中国市場に対する体制を強化した。

Isabel Ge Mahe氏(出典:アップルプレスリリースより)

iPhone 8の発表は、2017年9月中旬、例年のスケジュールから考えると、発売は9月22日金曜日になると考えられる。発売から1週間が含まれる2017年第4四半期、全期間で販売される2018年第1四半期、そして中国の旧正月を含む2018年第2四半期の、次の3つの決算が、まずはじめのチェックポイントとなる。