シャープが発表した2017年度第1四半期(2017年4月~6月)の連結業績は、同社が着実に回復の道を歩み始めていることを裏付けるものになった。
第1四半期の売上高は前年同期比19.6%増の5064億円、営業利益は前年同期の25億円の赤字から171億円の黒字に転換。経常利益は前年同期の223億円の赤字から改善して、171億円の黒字。当期純利益は前年同期の274億円の赤字から144億円の黒字となった。
シャープ 代表取締役兼副社長執行役員の野村 勝明氏は、「売上高は2桁以上の成長率を達成したのに加えて、営業利益が大幅に改善。そして、当期純利益は第1四半期としては、7年ぶりの黒字となった。また各セグメントでも黒字を継続しており、前年同期から大きく改善している」と、業績の回復ぶりを強調しみせた。
営業利益の改善に関しては売価ダウンで305億円、経費増で14億円のマイナス要素があったものの、「コストダウンおよびモデルミックスで244億円、販売増で220億円のプラス効果があった。競争力強化が改善の要因になっている」(野村氏、以下発言同氏)とした。
2016年8月に鴻海(ホンハイ)傘下で"再生"をスタートしてから約1年。野村氏は鴻海流の経営手法が成果に繋がったと語った上で、「戴正呉社長の強いリーダーシップによって、経営スピードが格段に早くなった。戴社長の経営手法が経営幹部に浸透したことで、3四半期連続の黒字にいたった」と自己評価する。
こうした業績の回復は、シャープの信頼を取り戻す結果に繋がった。「経営危機の時期は、設備投資にあたって着手金(前払い金)が発生していたが、これを要求されなくなった」。
好調なディスプレイ事業、第2四半期以降も「堅調に推移」
セグメント別では、「アドバンスディスプレイシステム」の業績回復が顕著だ。売上高は49.4%増の2496億円、営業利益が前年同期の68億円の赤字から、67億円の黒字に転換した。
「中国市場での販売拡大や、欧州市場におけるSKYTEC UMC LTDの子会社化がプラスに影響した。また、大手顧客向けスマホ用が好調に推移したほか、PC・タブレット向けの中型パネル、車載用パネルも好調。第2四半期以降もスマホ向けの受注で、今後も堅調に推移すると見ている」
今後は、中期経営計画の柱のひとつに位置づける「8Kエコシステム」への取り組みが鍵となるが、野村氏は「東京オリンピックの2020年度には、8Kエコシステムによる売上高を3000億円以上にしたい」と発言。8K関連製品の品揃えを強化し、「まずは社内で8Kエコシステム構築をしっかり進めていく」とする一方で、「その上で、お客様から望まれれば、8K液晶パネルの外販も検討する」とした。
さらに、有機ELパネルについては、「まずは、4.5世代の設備の開発、生産に向けて取り組んでいる。量産化の時期については、市場の流れを見定めながら、慎重に進めていく」と述べた。
苦戦したビジネスソリューションは「一過性」
一方、従来のIoT通信、健康・環境システム、エネルギーソリューションを統合したスマートホームでは、売上高が前年同期比4.2%増の1302億円、営業利益は同4.2倍となる99億円。「携帯電話事業の販路拡大効果や、プラズマクラスターイオン関連商品、洗濯機、掃除機が好調であった」とする。
さらに、カメラモジュール、電子デバイスを統合したIoTエレクトロデバイスの売上高が11.0%増の832億円、営業利益が3.5倍の17億円となり、「スマホ向けカメラモジュールの販売拡大や、レーザーおよび半導体などの独自デバイスの販売拡大が貢献している」という。