なぜグローバル化を進めるのか
楽天は昨年11月、スペインのプロサッカーチームであるFCバルセロナとスポンサー契約を結んだ。この契約について、三木谷社長は「FCバルセロナは『More than a Club』(クラブ以上の存在)として地域と共に発展してきた。楽天は起業時から『More than a Company』(企業の枠を超えた存在)として地方やパートナーと共に発展するという思いでやってきた。FCバルセロナと楽天の哲学に共通するものを感じたから」と説明するが、やはり大きな理由のひとつは「国内外での楽天ブランドの認知向上を図る」ことだろう。FCバルセロナの胸には大きく「Rakuten」のロゴが表記されるため、世界中のサッカーファンにRakutenブランドを認知させるチャンスだ。
とはいえ、楽天は海外市場において、そこまで大きな存在感を出せているわけではない。以前から楽天は社内の公用語を英語にすると発表して話題を集めるなど、グローバル化への志向が強い企業ではあったが、現在もEC関連の主力事業は国内向けの楽天市場だ。
海外でもEbatesなどのECサービスを展開していたり、Lyft、Koboなどのサービスを買収・出資することでグループ内に引き入れてきたが、一方で海外事業の見直しも行われている。
もちろん、今後楽天がEC事業などを海外にも展開していくというシナリオがないわけではないだろうが、どちらかと言えば今後、買収や提携を結ぶ際の影響力を重視しているのではないだろうか。相手がこちらを知っているのと知っていないのでは、やはり対応が違うだろう。日本ではソフトバンクなどと並ぶ巨大IT企業である楽天も、海外では日本のローカルの企業としてしか見てもらえないという状況を打破したいということであれば、FCバルセロナの件についても頷けるのだ。
ところで、楽天のロゴ変更について、中国のネットでは韓国のロッテグループと混同されるのを嫌ったのでは、という指摘があるそうだ。ロッテは中国語表記で、音だけを取って「楽天」と表記するとのことで、ロッテグループと無関係であることを明らかにするためにRakuten表記にしたという。
実際、以前楽天と百度が組んで中国に楽天市場を展開した際は、ロッテに商標を取られていたため、「楽酷天」の表記で展開していたという事実もある。もっとも、ロゴ変更の理由は別のところにあるが、楽天の海外での知名度を示すものであるかもしれない。Rakutenという表記が定着し、FCバルセロナのような世界の一流ブランドとして認められるようになるか、注目したい。