トヨタとホンダ、次世代エコカーの「本命」争いに変化?
トヨタが「21世紀に間に合いました」のコピーでHVの「プリウス」を投入したのが1990年代末。まさに同社はクルマの電動化の先駆けであり、エンジンとモーターで駆動するHVの投入は「トヨタHV戦略」を主流にした。これをベースとしてトヨタは、2050年をめどにエンジン車から転換すると宣言した環境戦略を2015年秋に発表している。
トヨタは従来から、HVからPHV、さらにはFCVへとステップアップする電動化を計画していたが、これに加えてEVの開発を加速させ、2019年には中国でEVの量産化に踏み切る方針を打ち出している。
電動化の先駆けとなったトヨタのプリウスには先頃、PHVの車種が追加となった(画像は「プリウスPHV」) |
ホンダも八郷体制2年目の今年に入り、2030年にホンダ車の3分の2を電動車に置き換えると発表している。トヨタとホンダは、将来の究極のエコカーをFCVとする方向で一致していたが、ここへきてEVに積極展開してきたのも、世界最大の市場である中国を意識した動きとみられる。
EVのリーダーを狙う日産、カギはアライアンスの有効活用
日産は、傘下に加えた三菱自動車工業のEV・PHVの開発力も活用し、EVリーダー連合軍を形成しようとの狙いを明確にしてきた。連合軍トップのカルロス・ゴーン氏による「EVでトップメーカーに」との宣言も、米テスラ・モーターズにお株を奪われた感がある中で、「欧州発EVシフト加速化の流れで、これからが本当の勝負になる」(日産の田川丈二常務)とする。
折しも米国では、テスラが量販EV「モデル3」の出荷を2017年7月末に開始。2016年3月の予約開始から、1カ月で約40万台を受注した話題のモデルだ。日産としては、2017年9月発売の次期「リーフ」からがEV戦略の本格展開となろう。
マツダは近く技術開発の新たな長期ビジョンを発表するとのこと。この中で、EV戦略が改めて注目されることになるはずだ。日本車各社は欧州の動きなどを睨みつつ、内燃機関と電動車の開発を並行して進めていくことになろう。
ただ、EVシフトが加速しているといっても、新たにクルマの燃料となる“電気”を何で作るのかで、環境保全の実効性は変わってくる。「ウェル・ツー・ホイール(油井から車輪まで)」の観点で考えた場合、クルマが排気ガスを出さなくなったとしても、発電の過程などで発生するCO2をどうするかという問題は残るのだ。原子力発電の是非が問われ、火力発電への依存度が高い日本では、EVだけに頼ることが、本当の意味でのゼロ・エミッションとならないことも考えておかねばならない。