フランス政府が2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を国内で止める方針を打ち出したのに次いで、英国政府が同様の方針を発表するなど、欧州発の「脱石油」と電気自動車(EV)シフトの流れが本格的に加速してきた。

もともと環境意識の高い欧州だが、なぜこの時期に仏・英政府が、23年後の2040年までと早い区切りを打ち出して「脱石油」に踏み切ったのか。

この時期に脱石油を打ち出す背景は

両国に先んじて、ドイツでは2016年秋頃、2030年までにガソリン車などの販売を禁止するという決議が国会で採択されている。ドイツの決議は法制化に至っていないが、すでに欧州各国では、こういった機運が高まっていた。

今回の仏・英政府の動きは、2017年7月初旬にドイツのハンブルグで開催されたG20首脳会議に合わせて、「パリ協定」からの離脱を表明した米国のトランプ政権に対抗し、牽制する狙いがあるものと受け止められている。

また欧州では、燃費に優れ、二酸化炭素(CO2)の排出も少ないディーゼル車の利用が多いが、最近ではディーゼル車からの窒素酸化物(NOx)による大気汚染問題と、独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題に続く独ダイムラーなどの疑惑もあり、こういった情勢もEVシフトを後押しする要因となっているようだ。

一連のディーゼルエンジン不正問題もEVシフトを後押しする要因となった

欧州の主導権争いも絡む環境政策

一方で、英国のEU離脱に見られるように、欧州の中では主導権争いもあり、環境政策が国策としてアピールしやすいということも、昨今の電動化シフトの動きに絡んでいるようだ。

フランス政府は声明を出したものの、規制のスケジュールや内容には踏み込んでいない。一方の英国政府は、地方自治体による排ガス抑制策の支援に2億5500万ポンド(約370億円)の予算を用意し、大気汚染対策に合計で約30億ポンド(約4349億円)を投じる予定とする。

いずれにしても今回、仏・英政府が2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止する政策を打ち出したことで、この流れは欧州各国にも飛び火し、かつ世界的にも、内燃機関から電動車への転換時期が早まっていくことは間違いないだろう。