一見まっすぐ、でも繊細さを持つ

――ライバルとして光っていたのが、鈴木伸之さんの亜門だったと思いますが、どのような印象でしたか?

亜門は、一見すると熱血キャラクターに捉えられがちなんですが、実は繊細な部分を持っている。原作が進むにつれて、背負ってる過去が垣間見えてくるんですよね。彼自身も揺れ動いていくし、カネキによってさらに揺れ動くという役どころ。鈴木さんは、お会いした時にそのビジュアルに亜門だと思いましたが、その先にある彼の繊細さも含めて亜門でした。

鈴木伸之(亜門鋼太朗役)

僕の中では、鈴木伸之と亜門鋼太朗ってほぼ同じなんです(笑)。鈴木さんはすごく真面目で熱血で、まっすぐな思いの中に一瞬見せる繊細さ、ふとした仕草や目線の一つ一つに亜門が重なります。演技だけでなく、話していてもすごく感じます。鈴木さんは、本当に真っ直ぐすぎて、驚かされることもあるんですけど、実はすごく繊細な部分も感じるんですよね。

ドラマ『あなたのことはそれほど』の有島役を見てても思ったんですが、有島は一見ものすごく”愚直”じゃないですか。でも見ていると、何か抱えているものがあるんじゃないかと思ってしまうんです。鈴木さんは、深みを持っている役者さんなんだと思います。

――ニシキやヒデといったキャラクターは、原作でもどんどん重要になっていくキャラクターですが、そこは意識してキャスティングされたんですか?

キーパーソンというのは、意識していました。小笠原海さんも、そのまんまヒデだなと思います。小笠原海という一人の俳優として見たときに、彼からにじみ出る周りを明るくする陽のオーラがすごい。超特急としての活動の中でも感じますが、『東京喰種 トーキョーグール』の中でもヒデは太陽みたいな存在だと思います。ヒデがいるからこそ、カネキが人間の心を保っていられるという存在に、とても合っていると思います。

白石隼也(西尾錦役)

小笠原海(永近英良役)

それでいてヒデも、やっぱりどこか秘めた思いを抱えているというのが、小笠原さんと似ているんじゃないかと思っていて。集まってくださった皆さん、役と通ずるものを持ってらっしゃる方が多いと思います。

コスプレにはしたくない、

――キャスティングの中で、印象深かった方はいますか?

満場一致だったのは、大泉洋さんです(笑)。みんな大泉洋さんの真戸が見てみたかったんですよね。ご本人もおっしゃっていらしたんですが、ここまで非道な役は今回が初めてということで、絶対怖くなると思ったんです。普段明るくて優しい大泉さんが怖い役をやったら、相当怖くなるんじゃないかなという思いはありました。

大泉洋(真戸呉緒役)

ただ、1番難しかったのも大泉さんでした。「どう考えてもこんな人はなかなかいないだろう」というビジュアルだったので、大泉さんと何回も話し合って進めていきました。コスプレっぽくしたくなかったんです。全体的にも、純粋に彼らが現実世界に飛び出してきたらこうなる、というビジュアルを追求したくて、じゃあそれに合う人って誰なんだろう? という観点でキャスティングを進めました。

――先ほども皆さん、キャラクターと似たところがあるんじゃないか、というお話でしたよね。

どうしても、キャラクターに合わない人を無理やり当てはめると、コスプレ感が出てしまうと思うんです。漫画という世界を、現実世界に落とし込みたかった。単なる真似ではなく、リアルに再現するとしたら、元からイメージが近い人の方が実現できるんじゃないかなと思いました。もちろん、どんな原作でもリアルにやればいいわけじゃないと思います。『東京喰種 トーキョーグール』に関しては、”どこまでリアルにできるか”を追求しました。

先日SNSで「試写を見終わった後に、本当に喰種がいるんじゃないかと思った」というお客様の感想を見て、とても嬉しくて。劇場から出た時に「もしかしたら喰種がいるかもしれない」「あの人も、もしかしたら」と思ってもらえたら嬉しいですね。

(C)2017「東京喰種」製作委員会 (C)石田スイ/集英社