EVで業界トップの日産アライアンス
「(欧州で政府主導の電動化が進む流れは、日産にとって)プラスになる」。決算説明会に登壇した日産の田川丈二常務執行役員は、電動化の流れに拍車がかかりそうな現状を追い風と感じているようだ。
日産はEVの「リーフ」を2010年12月に発売し、これまでに累計20万台以上を販売してきた実績がある。仏ルノーの「ゾエ」と三菱自動車の「i-MiEV」を合わせると、アライアンス全体でのEV販売台数は累計48万台を超えるという。これは業界トップの数字だ。日産の西川廣人社長は先頃、株主総会で「EVでリーダーシップをとる」と発言。業界トップの地位を今後も維持していくことに意欲を示していた。
EVへの不安払拭に期待、価格競争力も向上へ
欧州で政府主導の電動化が進むことは、欧州に本拠を置く自動車メーカーのEV戦略にはプラスになっても、日本メーカーに良い影響はもたらさないのではと思ったのだが、日産の捉え方は違うようだ。
リーフで業界トップのEV販売を達成した日産だが、その台数は当初の見込みよりも少ないという。顧客がEVを買い控える要因として、田川常務は「航続距離」「コスト」「充電インフラ」への不安があると分析。こういった不安が、欧州でクルマの電動化に向けた動きが活発になり、顧客のEVに対する印象が変化することで、払拭される可能性があるというのが田川常務の考えだ。
欧州で電動化の流れが加速すれば、多くのメーカーがEVを含む車両の開発に注力するようになる。そうすれば、サプライヤーを含む全体的なコストが下がって価格競争力が上がるので、EVの販売も「どこかの段階で加速する」と田川常務は予想する。しかし、この流れは競争の激化を意味するので、田川常務も「本当の勝負はこれから」と気を引き締めていた。
これから始まる本当の勝負に向けて、日産が期待をかけるのが9月に発表予定の次期リーフだ。新たなリーフは航続距離が伸びて、「プロパイロット」も搭載となる。発表に先立ち、日産がさまざまな情報を小出しにしているところを見ても、同社が次期リーフにかける期待は大きいようだ。