LINEショッピングはO2O戦略強化のための武器
藤井氏はLINEショッピングのコンセプトについて、「集客はLINEに任せていただいて、その先は各ブランドにお任せするというコンセプト。ただし、オンラインのサービスばかりでなく、将来的にはオフラインをターゲットにした、O2Oサービスにしたい」と語る。
LINEは2016年から「CLOSING THE DISTANCE」というスローガンを掲げ、LINEを入り口として、オンライン・オフライン問わず、人と情報、サービス、企業/ブランドをシームレスに繋げる「スマートポータル戦略」を展開している。
たとえばオンラインにおけるコンテンツへのポータルが「LINE MUSIC」や「LINEマンガ」、「LINE LIVE」なわけだ。一方、オフライン、実生活との接点としては決済サービス「LINE Pay」や、LINE Payに変換もできる「LINE ポイント」、店舗などが取得できる「LINE@」アカウントなどがそれにあたる。
この視点から見ると、LINEショッピングはオンライン・オフラインの双方で展開するブランドに対するポータルを提供し、将来的にオフラインにユーザーを誘導することが目的なのだとわかる。逆にいえば、この目的を前提にすれば、Yahoo!や楽天に出店しているような、オフラインに店舗を持たないオンライン専業ショップは積極的に取り込む必要もないわけだ。
藤井氏は「日本のオンライン小売マーケットは7~8兆円程度だが、オフラインの小売マーケットは150兆円とも言われている」と指摘する。オフラインはオンラインと比べて、はるかに巨大な市場だ。LINE CONFERENCEの壇上で藤井氏は流通額目標として1000億円という数字を挙げたが、オフライン市場も含めれば1%に満たない数字であり、LINEの6800万人と言われる国内のユーザーベースから考えれば、十分目標圏内というわけだ。
とはいえ、これまでオンラインで主に電子データを扱ってきたLINEにとって、たとえば実際に在庫を抱えたり、流通や決済に関わるといった、大規模なショッピングサイトの運営に乗り出すのはリスクが大きい。そこで現実的な選択肢として、ショッピングカートや決済にはかかわらず、あくまで送客に徹することを選んだのだろう。
LINEショッピングはオフラインへの送客を見据えた上でのショッピングポータルという位置付けであり、Yahoo!ショッピングや楽天市場、Amazonなど既存のショッピングサイトと同列に扱おうとすると、LINEが目指すところが見えなくなってしまう。藤井氏が「LINEらしさを突き詰めた結果として送客に集中した」と語るように、LINEショッピングは単なるウェブショップではない。ショッピング自体も送客ビジネスの手段として位置付け、LINEの集客力を生かし、培ってきたサービスを繋げる、LINEのO2O戦略を推進するためのツールだと言えるのだ。