現在も現役の巨大な屈折望遠鏡

花山天文台は東山連峰の山中に昭和4(1929)年に設立された、国内では2番目となる天文台であり、直径9mのドームがある本館には、東京・三鷹の国立天文台と岐阜・高山の飛騨天文台(ともに65cm)に次ぐ、国内3番目の大きさを誇る45cmの屈折望遠鏡がある。

「京都大学 花山天文台」へは公共交通機関の他、期間中は地下鉄東西線「東山駅」から無料のシャトルバスを運行している

実は飛騨天文台も京都大学付属の天文台であり、京都市の人口増加などを理由にして、花山天文台から昭和43(1968)年に建てられた飛騨天文台に観測の主力が移されたが、花山天文台は現在も研究・教育活動、また、アウトリーチの拠点として現役で活躍している。花山天文台9代目台長の柴田一成教授によると、アマチュア天文家によって発見された彗星の数は日本が世界一を誇るが、その拠点となったのが花山天文台であり、それゆえに花山天文台は"アマチュア天文学の聖地"としても愛されているという。

45cmの屈折望遠鏡は国内3番目の大きさとなる

花山天文台9代目台長の柴田一成教授が特別にレクチャーしてくれた

「京の夏の旅」では通常、花山天文台の本館と歴史館を見学でき、ガイドが説明してくれるが、今回は特別に柴田台長に案内していただいた。本館に設置された屈折望遠鏡は想像していたよりも大きく、また、大きな錘(おもり)を原動力とした重力時計が備えられているのが印象的だった。この重力時計や望遠鏡の方角移動などを手動調整するところにも、歴史を感じる。

あまりに望遠鏡が大きくなってしまったため、望遠鏡をのぞくために階段が必要になったという

重力時計も手動で操作

アポロ11号の成功の裏に花山天文台

この望遠鏡からは月のクレーターもくっきり見ることができる。3代目台長の宮本正太郎教授の時代、アポロの月着陸の際の適正地点を決定するために、NASAから月面の地形の詳細観測を依頼されたこともあるという。また、宮本台長は20年以上、この花山天文台で火星観測を続け、火星気象学の基礎を築いた。その元となった3,000枚にもおよぶスケッチは京都大学に寄贈されており、現在、そのスケッチは天文台の横で投影されている。

3代目台長の宮本正太郎教授の火星スケッチも投影中

本館の側には、レトロでかわいらしい趣の平屋屋根の建築がある。これは本館、別館とともに昭和4年に建てられたもので、現在は歴史館として保存されている。かつては子午線館という名で、子午儀を用いて正確な時間を知るための観測がここで行われていた。

サイズ感といい、かわいらしいこの建物が資料館

子午儀は正確に子午線上を動くよう、縦にしか動かないようになっている。星が子午線を通過する時刻を正確に測ることで、すぐ側に展示されている観測時計の精度を高めていたという。館内にアポロ11号のアームストロング船長の月面第一歩をデザインした灰皿があるところにも、この天文台とNASAのつながりの深さを感じさせられた。

子午儀と観測時計。現在も利用できる

灰皿は宮本台長の時代にNASAから寄贈された

●information
京都大学 花山天文台
公開日時: 7月8日~9月30日の10~16時
住所: 京都府京都市山科区北花山大峰町(東山ドライブウェイ内)
アクセス: 地下鉄東西線「蹴上駅」からタクシーで5分。「京の夏の旅」期間中は、地下鉄東西線「東山駅」から無料シャトルバスあり
料金: 大人800円、小学生400円

※価格は税込