では、8Kは、業績にどの程度、貢献するのだろうか。

シャープは、現在、業務用の8Kディスプレイを商品化しているが、ユーザーは限定的だ。民生分野に向けては、2018年12月の8K実用放送にあわせた製品投入になるため、それまでは業績への貢献がほんどないといっていい。

同社は2018年度に年間1000万台の液晶テレビを全世界に出荷する計画を打ち出しているが、出荷時期を照らし合わせれば8Kテレビの貢献度は微々たるものになる。むしろ、出荷台数の拡大を支えるのが海外向けの中小型テレビだとすれば、1000万台出荷の原動力となるのは、8Kテレビでも、4Kテレビでもなく、依然として、2Kテレビという可能性の方が高い。

一方で、2019年度を最終年度となる「2017~2019年度 中期経営計画」においても、8Kテレビが業績を牽引するとは考えにくい。

2018年12月の実用放送開始以降、どれほどの勢いで8Kテレビの市場が立ち上がるかを予測するのは難しい。ただ、販売台数比率では2Kテレビや4Kテレビよりも、圧倒的に低い水準に留まるのは確かだろう。問題は販売金額ベースで、どれほどの勢いが見込めるのかという点だ。

シャープは「2017~2019年度 中期経営計画」の成長戦略のひとつに「8Kエコシステム」を掲げた。この狙いは、8Kエコシステムによる売上げ確保というよりも「8Kエコシステムの地盤づくり」を行い、次の中期経営計画で飛躍させるための準備を整える期間だと見ることができよう。

シャープの次期中期経営計画が初年度を迎える2020年は「東京オリンピック/パラリンピック」が開催される年。総務省の4K・8K推進のためのロードマップでは、2020年に4K・8K放送が普及し、多くの視聴者が市販のテレビで4Kおよび8K番組を楽しんでいる世界を描いている。

その世界が訪れるタイミングで、シャープは果たしてロケットスタートを切ることができるのか。今はそれに向けた助走を、しっかり始めている段階であることを感じた。