既報の通り、Mozillaの公式支部として日本での活動を続けてきたMozilla Japanが、この7月から社名をWebDINO Japanに変更した。新しい名前の由来は、Webの「多様性=Diversity」、「国際化=Internationalization」、「中立性=Neutrality」、「公開性=Openness」の意味が込められている。もちろん、これまで通り、Firefoxの日本語版の配布およびMozilla製品に関する公式情報の提供は、米国Mozillaの公式サイトで継続される。今回、組織名変更後、初となるMozillaコミュニティミーティングが開催された。

新旧・さまざまなMozillaコミュニティメンバーが集結

これまでもFirefoxの普及活動、オープンソースの啓発やWeb標準技術の推進で大きな役割を担っていたのが、ボランタリーで活躍するコミュニティである。Mozillaのコミュニティといっても、1つの大きな組織があるわけでなく、個々人の関心ごとにその活動はさまざまで、自発的な活動グループが個別に存在する。今回、Mozilla Japanが組織名を変える際、こうしたMozillaのコミュニティメンバーには事前の予告がされていたが、今回、あらためてWebDINO Japanとなった新組織の呼びかけで、7月15日にMozilla関連の活動をリードするメンバー、過去に携わったメンバーなどが集まるミーティングが開催され、今後のMozillaの活動方針などについて話し合いが行われた。

まずは、Mozilla関連のコミュニティ活動をいくつか紹介しよう。

  • 製品L10N(日本語版作成)コミュニティ
  • ドキュメント翻訳コミュニティ
  • ニュースと相互ユーザーサポートのMozillaZine.jp
  • Firefox学生マーケティングチーム

日本では、ローカライズ作業(Localizationを略してL10Nと呼ばれている)からコミュニティに参加するメンバーが多いと聞く。なかでも重要なのが日本語版制作に携わる製品L10N。FirefoxやThunderbirdは、80か国語以上の言語に対応したバージョンが配布されているが、こうした各国語対応も有志のボランティアによって作業が行われている。その他、Web開発の現場でお世話になるMDN(Mozilla Developer Network)の技術文書やユーザーサポートのためのドキュメントを日本語に翻訳する翻訳のグループなどもある。翻訳作業以外にもFirefox学生マーケティングチームのように、啓蒙活動や勉強会の開催、さらにはちょっと楽しめるイベントの企画など、学生らしい活動も自主的に行っている。日本では、公式支部としてMozilla Japanという組織が存在しつつ、こうしたコミュニティが大きな役割を担ってきたといえる。

図1 開催されたオフラインミーティング

今回、さまざまなコミュニティから一同に集まったのも稀有なものとなった。

Mozilla Japanのこれまでの活動

ミーティングの冒頭、WebDINO Japan代表の瀧田佐登子氏から、社名変更の経緯などが紹介された。その前に、ちょっとだけ歴史を振り返ってみたい。実は、Mozilla Japanの設立(2004年)は、Mozilla Corporationの設立よりも1年ほど早く、当時からMozilla のコミュニティ活動が活発だった日本に向けてのマーケティング活動を行うため、Mozilla Foundationの公式支部として設立された。当時はヨーロッパなどにも同様の組織が存在していたが、今では、特定の地域や国のマーケティングを行う組織は、日本以外になく、基本的にMozillaのマーケティング活動は、米国Mozilla Corporationがグローバルに向けて行っている。

いわば、Mozilla Japanは、現在のMozillaの組織の中では特異な存在となったわけだが、ここへきて、組織としての枠組みをグローバルに合わせる必要が出てきたため、今回の組織名変更に至ったという。Mozilla Japanは、日本の市場に向けて設立された組織ということもあって、この13年間、つねにローカルやアジアのことを念頭に、独自の活動にも力を入れてきた経緯がある。Webを組み込みプラットフォームとして広げるためのProject GEM(Gecko Embedded)やFirefox OSなどにも積極的に取り組み、大学での教育プログラム支援など独自の活動も行ってきた。

今回、今後も同様の活動を継続しつつ、Mozillaの活動は、あえてコミュニティの立場に立ち返って続けていく道を選択した。そのためには、Mozilla Corporation配下のマーケティングオフィスではなく、独立したブランドの組織に変える必要があった。今後は、Mozillaにとっても日本のコミュニティにとっても、次に繋がる活動を目指すという。