なぜBitcoin価格は上昇し続けるのか
Bitcoin価格の上昇について、今度は少し技術面から見ていく。各国の金融政策や投資家の思惑でいくらでも価値が変化する"普通の通貨"に比べ、Bitcoinの価格は比較的安定しており、価値の毀損が少ないといわれる。その一番の理由として、Bitcoinの追加供給が限られており、しかも今後年数を経過するごとに1日あたりの供給増加ペースは減少していくという仕様上の特性がある。一時的に値崩れすることはあっても、供給が限られているがゆえに需要が続く限りは大きく価値が下がりにくいのだ。
Bitcoinでは資金の流れを中央で集中的に管理する機構はなく、代わりにBitcoinのネットワークを維持する参加者らによってその取引台帳を分散管理する仕組みが採用されており、これは分散台帳(Distributed Ledger)と呼ばれる。分散台帳は10分ごとに検証と更新が行われ、過去の取引記録の要約を含んだ形で新しい分散台帳へと引き継がれる。この連鎖をブロックチェーン(Blockchain)と呼び、取引の改ざんや介入には、ネットワーク維持に参加するコンピュータを上回る膨大な計算能力が必要なことから、安全性が高いとされている。ネットワーク維持に参加するコンピュータは一種のボランティア的なものだが、分散台帳の検証計算を行った報酬としてBitcoinでの支払いが行われる。そのため、この作業はマイニング(Mining: 採掘)と呼ばれ、コンピュータの演算能力をネットワーク維持に提供するためのモチベーションになっている。
ただし、ここで支払われるBitcoinの報酬額は分散台帳が21万ブロック、年数計算で約4年で半減するというルールがある。2008年にBitcoinがスタートした時点では1回あたりの報酬は50 BTCだったが、2012年の時点で25 BTC、2016年には12.5 BTCまで減額されている。Bitcoinの半減周期を計算するサイトによれば、次のタイミングは2020年6月20日となっている。最終的に2140年までにほぼゼロになることが見込まれている。マイニングの報酬が減るということはネットワーク参加者のモチベーション低下につながり、ひいてはネットワーク維持が難しくなることを意味する。だが現在、Bitcoinの交換レートは上昇の一途をたどっており、Bitcoinそのものの支払額は減少しても、それを補って余りある価値を生み出している。最近、マイニング作業に必要なGPUカードの品切れが多数報告されているが、それだけマイニングに"うまみ"を見出した潜在的なネットワーク参加者がいることの現れだろう。交換レートの上昇はネットワーク維持に不可欠な要素でもある。
他の類似の仮想通貨としてRipple (リップル)やEthereum (イーサリアム)などがあるが、国際決済銀行(BIS)の決済・市場インフラ委員会(CPMI)の2015年末の報告によれば、こうした仮想通貨の時価総額の9割以上をBitcoinが占めている。だがBitcoinに注目が集まることで、他の仮想通貨も上昇傾向がみられるようになった。例えばRipple (XRP)は過去半年だけで対米ドルでのレートが10~20倍にも上昇しており、投資案件としてのリターンは非常に大きい。本来であれば利幅のほとんどない業者が持ちかけた仮想通貨の売買が、たまたま急上昇のタイミングにあたって大きな利益を生み出しているというケースさえある。ただし、2017年初頭からの上昇ペースを今後も維持できるかは難しいところで、やはり上昇幅は一定のペースに落ち着くと考えておいたほうがいいかもしれない。