ある程度の台数を走らせるのが目標
2020年に東京でエリア限定の自動走行タクシーを走らせるとの目標だが、それはシンボリックに2~3台の車両を走行させるつもりなのか、あるいは、急増が見込まれる外国人観光客の役にも立つような、ある程度の規模の運用を行うつもりなのか。気になったのでZMPの谷口社長に聞いてみると、前者の考えは明確に否定された。台数こそ明かしてもらえなかったが、少なくとも、自動走行タクシーを滅多に見かけない存在にするつもりはないようだった。
ある程度の台数を運用するとすれば、車両の価格も問題になってきそうだ。もちろん自動走行タクシーの価格は不明だが、参考までにZMPが扱うミニバンタイプのロボカーの価格を確認してみると、1800万円(税別)という設定となっていた。自動走行車の価格が、タクシー会社が一定数を用意できるレベルに下がるかどうかも問題になってきそうだ。ちなみに谷口社長は、自動車メーカーに生産を委託し、車両を量産するというアイディアも検討中だという。
技術開発は追いつくか
自動走行タクシーが実際に2020年の東京を走るかどうか。そして、それは何台くらいの規模になりそうか。その辺りを想像する以前に、実際に技術開発が間に合うのかどうかも気になるところだ。
ちなみに、研究開発費に年間1兆円以上を投じるトヨタ自動車の取り組みを見てみると、自動運転技術の開発方針としては、2020年ごろを目標に高速道路で「料金所から料金所まで」の自動走行を実現し、2020年代前半~半ば頃に一般道向け自動運転技術「アーバン・チームメイト」を商品化する意向らしい。
ZMPはタクシードライバーが持つ運転に関する知見なども収集しつつ、自動運転技術の開発を進めていくというが、2020年までに一般道で運用するとなると、クリアすべき課題も多そうだ。
ZMPの谷口社長が自動走行タクシーの構想を抱いたのは、路線バスが廃線となったり、タクシー会社が廃業したりして、クルマなしでは生活できない環境にある地方の状況を目の当たりにしたからだそうだ。いわゆる“交通弱者”に手軽な交通手段を提供するという意味でも、自動走行タクシーの実現には期待したいところ。技術開発、車両の価格、法規制など、乗り越えるべきハードルは多そうだが、まずは2020年の東京で、実際の車両が走行するかどうかに注目したい。