トヨタのセダンユーザーに乗り換え需要?
日本における新型カムリの月販目標台数は2400台。年間に直せば3万台弱という数字だ。ちなみに、日本自動車販売協会連合会によると、2016年4月から2017年3月までの乗用車販売台数ランキングはトップがプリウスの約22万5000台。カムリと同じく、トヨタが「グローバル量販車」に設定する「カローラ」は8万台強という結果だった。もちろんカローラやプリウスとは価格も立ち位置も異なる新型カムリだが、セダン市場に逆風が吹いていると言われる中で、月間2400台の目標は達成できるのだろうか。
トヨタで国内販売を担当する村上秀一常務によると、日本には現在、新車で購入されたカムリが約7万台存在する。一方、トヨタのミディアムクラス以上のセダンに乗っている人は250万人に及ぶそうだ。この差に潜在的な需要があるというのがトヨタの見立てのようで、村上常務は、セダンユーザーの100人に1人でもカムリを購入してくれれば、販売目標達成は難しくないとの考え方を示していた。
全国4000店の販売網
カムリの販売戦略として、トヨタは取り扱い店舗を増やす計画だ。従来は「カローラ店」のみの販売だったが、新型カムリでは「ネッツ店」および「トヨペット店」でも販売する3チャネル体制を敷く。これにより、カムリは日本各地に広がる約4000店の販売ネットワークに乗ることになる。
カムリはグローバル量販車なので、トヨタとしては当然ながら、世界での販売台数も伸ばしていきたいところ。米国では15年連続で乗用車販売台数ナンバーワンを獲得し、世界では100カ国以上の国・地域で累計1800万台超を売ったという実績を持つカムリだが、米国では「ホワイトブレッド(食パン)」というニックネームで呼ばれることもあり、堅実ながら特色に乏しいといったような評価もあったそうだ。そういう意味で、今回の「前例のない変革」が、米国市場に響くかどうかにも注目したい。ちなみに、米国でカムリは月間3万台超の売れ行きであり、新型でも同じ水準を維持していきたいというのがトヨタの考えだ。
吉田専務が1980年代に言及したことからも分かるように、トヨタが新型カムリの主な購買層と考えているのは当時のクルマ好き、もっと言えば50代以上の顧客だろう。しかし、今回の新型カムリはTNGA導入もあって大幅な変化を遂げているので、トヨタとしては往時のカムリを知らない若い客層の獲得にも挑戦するつもりのようだ。SUV流行りの市場に乗り出す新型カムリの売れ行きと評判は、セダンというクルマの現在地と可能性を探る上でも重要な指標となりそうだ。