一方、DeNAのICT教育は何か。こちらもプログラミング教育に注力している。DeNAといえばIT企業だ。プログラミング教育に注力しているのは、“将来のIT人材の確保”がねらいだろうと、短絡的に考えてしまう。ところがプレゼンを行った同社 渉外統括本部 末廣章介氏によれば、それは異なり、CSRだという。
そもそものきっかけは、創業者の南場智子氏が、政府関係者から「なぜ日本にはイノベーションを起こす人材が育たないのか」と、問いかけられたことだった。ところが日本では大企業志向が強く、起業への意識が薄い。ある調査によると「起業したいか」との問いに「Yes」と答えた数は、調査国70カ国中最下位だったという。
しかも、将来は47%の仕事がAIやIoTに奪われるといわれている。こうした時代を乗り切るための人材を育てる教育は何か。DeNAは新しいタイプの“デジタルデバイド”に着目した。
新しいデジタルデバイドからプログラミング教育を発想
「以前のデジタルデバイドは、IT機器が『使えるか』『使えないか』という構図でした。ですが、今やIT機器をほとんどの人が使えます。これからは『つくれるか』『使えるか』になります」(末廣氏)。これはIT機器を単に使えるだけでなく、“何かをつくれる”ほうが優位に立つということだ。“つくれる”というキーワードを考えれば、プログラミングにたどりつくのは自然な流れだ。
そこでDeNAは、佐賀県・武雄市に着目する。この自治体はタブレット一人一台体制となっており、プログラミング教育を導入するのに好都合だったからだ。ところが当時の武雄市のタブレットは非力で、一般的に出回っているプログラミングツールがスムーズに動かない。そこでDeNAは自社でオリジナルアプリを開発するが、このアプリを小学校低学年向けとした。
対象は小学校1~3年。自分の描いた絵が動かせるという内容で、これなら低学年でも興味を持ちやすい。2014年から始まった同社の取り組みは、現在、武雄市と神奈川県・横浜市で行われている。
さて、松江市は人口減少がきっかけとなり、企業誘致に有利になるような人材を育てるためにプログラミング教育にいたった。DeNAは、“日本の将来を憂える”というような考え方から、プログラミング教育を開始した。同じプログラミング教育でも、スタートの背景は異なるのだなぁと、ユニークに感じた。