このように盛り上がるスマートスピーカー市場だが、ビジネスモデルがわからないという方も多いだろう。何より「何に使うの?」と疑問に思っているかもしれない。実際のところ、先行するAmazonの事例を見る限り、利用されている機能の多くは「音楽演奏や機器制御などのハンズフリー操作」の部分にある。例えば、スマートフォンを操作することなくお気に入りのプレイリストなどを演奏させたり、就寝時に消灯や目覚ましのセットを行ったりと、非常にシンプルなものだ。
Amazonの狙いはGoogle、Microsoftも目指す道
Amazon EchoとAlexaに関して、「Amazon Prime」に紐付いたサービスだと指摘されることが多い。音楽演奏や普段の購買行動など、Primeのサービスを快適に利用する仕組みが音声のみで簡単に利用できるからだ。また、Amazonは1家に1台とはいわず、複数台のEcho (Echo Dot)導入を推奨しているように見える。
同社はEcho同士で内線通話できる機能の提供を開始しており、各部屋にEchoを設置しておけば家のどこにいてもAlexaに話しかけるだけでサービスが利用できるからだ。おそらくAmazonが目指すビジネスモデルとは、さまざまな場所にEchoを張り巡らせることでAlexaの利用できる環境を整備し、同社サービスへより多くの人々を誘導することにある。あわよくば同社の大きな収益源であるPrimeの加入が増えてくれれば御の字だろう。
Googleもそれに近いビジネスモデルを描いていると思われる。Google Assistantの利用が広がれば、それだけ各種のデータが蓄積されてユーザーのGoogleサービスでの滞留時間が長くなり、結果として同社のビジネスを広げる機会にもなる。Microsoftは現在Azureというクラウドサービスの提供拡大に邁進しており、やはりCortanaを通してAzureの利用を推進することが将来的なビジネスの拡大へとつながる。その意味では、AlibabaやLINEも同種のビジネスモデルを描いていると予想する。
ポートフォリオに合致しないApple
逆に、ビジネスモデルが見えにくいのがAppleだ。100~150ドル以下でデバイスを大量にばら蒔いてエコシステム拡大に努める競合らに対し、AppleのHomePodは349ドルと高価だ。同社はHomePodを高級スピーカーと位置付けており、さらに前述のようにApple自体がクローズドなエコシステムでサードパーティの介入する余地をあまり残していない。
想像ではあるが、Appleはこのスマートスピーカーの市場にいまだ懐疑的で、少なくとも最低限の利益を確保できるレベルで製品を投入し、あまりリスクを負わない方向性を目指しているように見える。投入時期が2017年末と遅く、さらに市場が米国限定というあたりにその方向性がうかがえる。
製品としては、Amazon Echoが音楽利用中心になっていることを勘案して、高級スピーカーとしての性格を強くしたようにも思える。いずれにせよ、ハードウェアをビジネスの主軸に据えるAppleと、これを撒き餌にビジネスを拡大する方向性を見出している競合とは目指すものが異なるようだ。