大学だけではない。協賛企業も工学院大学のソーラーチームに手厚い支援を行った。その代表例が、帝人だろう。
帝人といえば、繊維を主事業とする企業。炭素繊維「テナックス」などの軽量素材を提供することで、工学院大学ソーラーカーの車体軽量化に協力した。しかも、今回はチームのスタッフウェアまで提供するという力の入れようだ。帝人の担当者によれば、工学院大学ソーラーカーのサポートは3回目になるが、今回がもっとも幅広い範囲で協力するという。そのぶん「協賛金も今までで一番大きいです」と、担当者は笑みをこぼす。
そのほか、タイヤ面などでブリヂストン、太陽電池でサンパワー、セラミックベアリングでNTNといった企業が協力する。もちろん、ここで紹介した企業はほんの一部で、49の企業・団体のサポートを受けて、工学院大学ソーラーカーは、オーストラリアの砂漠地帯を疾駆する。
自社のテクノロジーを磨く
なぜ、これほど多くの企業がソーラーカーレースに協力するのか。それは、各社が自社のテクノロジーの優位性を証明したいというのが本音だろう。続いて、ソーラーカーという、化石燃料に頼らないビークルに技術を提供するために、自社のテクノロジーを磨くという思惑がある。
これは、帝人の担当者に聞いたのだが、「テクノロジー向上はもちろんですが、ほかにも意義はたくさんあります」という。
なかでも、企業CSRの概念が強い。そもそもソーラーカーは、CO2を排出しないビークルだ。このビークルの早期実用化のために、企業が技術や資金を提供することは、社会的責任を果たすということになる。そして、学生たちに実践の場、さらに“夢”を与えることは、人材育成という面でCSRの根本ともいえよう。
これは、チームの監督、濱根洋人氏の言葉が象徴的だ。「レースを制覇することで、子どもたちにエンジニアの可能性を伝えたい」と話す。
ソーラーカーお披露目の日、会場にはタレントの足立梨花さんも姿を現した。「高みに向かっていくチームの姿勢に共感しています。ぜひとも栄冠を勝ち取ってほしいです」と、エールを送った。