「麻布十番」――なんだか高級な響きを脳裏に抱かせるこの街は、東京屈指の夜の街・六本木のお隣に位置している。そんなこともあり、麻布十番=夜の街というイメージをもっている人も多いのではないだろうか。ところが、意外にもここは、食べ歩きグルメの宝庫でもあるのだ。そんな、昼夜問わず行きたくなる、麻布十番を紹介しよう。

麻布十番は食も文化も、人情も豊かな街

のんびり広々とした"商いの街"

麻布十番へは、東京メトロ南北線もしくは都営地下鉄大江戸線の「麻布十番駅」で下車する。地上へ出ると大通りがあり、ひっきりなしに車が行き交っているにも関わらず、不思議とぎゅうぎゅうに混雑した都会の雰囲気とは少し違う。いわゆる、開放感があるように思えた。道路に石畳が敷かれ、たくさんの木々に彩られているからかもしれない。

車道にも石畳が

この一帯は「麻布十番商店街」という名が付けられている。しかし、多くの商店街で見られるような一本道のものではなく、小さな商店が通りという通りを埋め尽くしている形だ。商店街のオフィシャルマップを見るとかなり広範囲に広がっているようだが、実は縦横500mに収まるくらいであり、お店も意外と密集している。そのため、"歩き回る"という感覚もあまりないほどである。

異国気分、だけど下町感も満載!

このあたりには、オーストリア大使館やアルゼンチン大使館など、数多くの大使館が置かれている。そのため外国の食材を扱うスーパーが、いかにも日常といったふうに開いている。学校帰りのさまざまな国の子どもたちが一緒になって歩いている。そんな、観光客とは違う、日本を生活の場としている風景が麻布十番にはある。だからこそ、地に馴染んだ異国風情があるのだろう。

しかしここは、江戸時代から武家屋敷が並び、商業で発展してきた街でもある。驚くほど"ザ・日本"な老舗は多く、お店の人の下町感もいきている。イマドキなお洒落な街とも、港町とも違う、独特な面白みがあるようだ。

和情緒あふれる店がところどころに

女将さんがキュート! 寿マークの今川焼き

今川焼きは食べ歩きの定番中の定番だが、これほど下町感のあるお店も珍しい。「月島家」は、創業昭和26(1951)年。その古風な店構えが楽しい。「LOVE」と書かれたピンクの帽子とピンクのエプロンを身にまとった女将さんは、「みんな、皮が他と違うって喜んでくれるの! 」と、元気いっぱいに教えてくれた。

少し小ぶりな「今川焼き」(140円)。一番人気はあんこ。このほか、カスタードやチーズも

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月島家
東京都港区麻布十番2-3-1

和菓子屋でワッフル!?

創業明治43(1910)年という老舗の「紀文堂」。いかにも看板商品らしく「人形焼」と書かれているのだが、それを横目に注目したいのが「ワッフル」である。しかし、見た目はワッフルでも、食べてみるとほのかに和の風情がある。実際に食べて感じてみてもらいたい。

「ワッフル」(カスタード/140円)。このほか、あんずジャムや抹茶クリームなども

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紀文堂
東京都港区麻布十番2-4-9

素材にこだわったさっくりドーナツ

素朴な店構えの「nicoドーナツ麻布十番店」のドーナツは、大豆を丸ごと使ったペーストや雑穀パウダーを使用して作られている。と言っても健康食品のような雰囲気はなく、言われなければ大豆や雑穀の存在には気づかないかもしれない。豆乳ともおからとも違う、大豆丸ごとのスムージー「Soy Bean Smoothie」(550円~)もある。健康的だ。

一番人気は「チョコレート」(230円)。そのほかの人気商品「きな粉ミルク」(210円)はほのかな甘み

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nicoドーナツ麻布十番店
東京都港区麻布十番1-7-9

ドーナツなのにかりんとう!

和菓子に分類したくなるジャパニーズテイストのドーナツが、パン屋「モンタボー」の「かりんとうドーナツ」だ。見た目は巨大なかりんとうだが中はソフトで、パン屋らしいお菓子と言えるだろう。

「かりんとうドーナツ」1袋367円。まるでプレゼントのように包んでくれる。

1本で大人の指2本分くらいの大きさ。たくさん入っているため、お友だちと分けてもいい

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モンタボー
東京都港区麻布十番2-3-3

「たい焼きの名店」として知られる「浪花家総本店」も、麻布十番の老舗のひとつ。その名の通り、たい焼きがおいしいお店なのだが、実はあのグルメもひそかに絶品という噂を聞きつけた。さて、そのグルメとは!?