その点、液体の塩こうじにはアドバンテージがある。まず、粒状の塩こうじは、基本的に「まぶす」調理法しかできないが、液体の 塩こうじの場合、目玉焼きのように、手で直接触れることができない食材に液体をかけることで味付けもできる。
「液体塩こうじは、粒状の製品を使っていたカスタマーの方との意見交換からアイデアが生まれました」(平田氏)という。その意見を参考に液体の塩こうじを開発し、製品化してみると、さまざまな料理に使えることがわかってきた。
さらに、“塩こうじ=和食用の調味料”というイメージからの脱却にも“液体”という形態が功を奏し始めているという。その一例が「クレープ」だ。クレープの生地に液体塩こうじを混ぜることにより、ふっくらと焼き上げることができる。粒状では生地にとけさせることはできないが、液体ならばそれが可能だ。実際、 渋谷のクレープ店では、液体塩こうじを使った、その名も「ふっくらもちもち塩こうじクレープ」 が期間限定で販売されているそうだ 。
ここで気づいた方もいらっしゃるだろうが、クレープといえば洋食のデザートだ。塩こうじは、和食用の調味料のイメージが強いと前述したが、洋食への活用が進んでいる。これも液体化したからならではのメリットといえる。
平田氏によれば、「液体塩こうじは外国人シェフにも好評で、ミシュラン1つ星を獲得しているあるフレンチシェフが、“液体塩こうじは、白ワインの代わりになる”と 、そのホテルのメニューで使用しています」という。また、とある国内のイタリアンレストランでは、液体塩こうじを使用した「ペペロンチーノ」のレシピも存在している 。ある老舗中華料理店でも恒常的に利用されているそうだ。
業務用でも注目され始めており、コンビニやスーパーでのお総菜でも利用が進んでいる。特にコンビニ製品ともなれば、製造効率が求められるので、粒状ではなく液体のほうが、効率アップには適しているといえるだろう。
このように、発売以来、家庭料理を中心に利用されていた塩こうじだが、昨今では、“外食”“中食”市場でジワジワと浸透し、知らず知らずのうちに口にしている。平田氏は、液体塩こうじの売上について「家庭用・業務用共に伸びており、2016年6月~2017年5月の期間で、対前年売上130%の成長と、毎年堅調に推移している」と話す。 今後さらに、“あのお店のあの味を!”と、家庭でも和食以外のさまざまなジャンルの料理にまで塩こうじの用途が広がっていけば、それこそが“ブームに左右されない生活に根ざした調味料”ということになるのだろう。