2010年台初頭ごろ、爆発的なブームを巻き起こした調味料がある。そう「塩こうじ」だ。各メーカーは大量のCMを打ち、テレビの料理番組では塩こうじを使ったレシピが紹介され、料理とは関係ないバラエティ番組などでも取り上げられていた記憶がある。

これほど“垂直立ち上げ”的に人気が爆発した調味料は、いや食品全体をみわたしても、塩こうじ以外に思い当たらない。連日のテレビ露出に、料理をまったくしない筆者すら、「今度試してみるか……」と思わせるほどのブームだった。

ハナマルキ 常務 執行役員 マーケティング部長 平田伸行氏

ところが、数年経った現在、あれほどのブームだった塩こうじの名前をすっかり聞かなくなった。塩こうじブームの勢いはすさまじかったようで、市場規模は、ブーム全盛期と比べると1/3ぐらいの規模になっているという。人々の生活にとけこみ定着したのか、それとも忘れ去られてしまったのか……。当然、筆者も塩こうじを使った調理を試すことなく、この調味料の名前を思い出すこともなく数年を過ごした。

「ブームがひと段落して以降、ここ2年ほどでは、ジワジワと塩こうじが伸びています」と、ハナマルキ 常務 執行役員 マーケティング部長 平田伸行氏は話す。その牽引役となっているのが「液体塩こうじ」という商品だ。

基本的に塩こうじといえば、粒状だ。肉や魚に塩こうじをまぶし、数時間つけ込んでおくことにより、食材はやわらかくなり、旨味が増す。ただ、粒状の場合はその形状から、使える料理・食材が限られるほか、焦げやすいという難点もある。その点、液体ならば使用範囲が広がり、使い勝手もよくなる。

塩や醤油、味噌、お酢といった調味料が、どのように我々の生活に馴染んできたのかわからないが、塩こうじのように“一気に”というワケではないだろう。おそらく、長い年月をかけて、日本人の食生活にジワジワととけこんできたのではないか。実際、ハナマルキも、塩こうじはポテンシャルのある調味料として捉えており、定番調味料としてどんどん根づいていくだろう、と考えているようだ。

ただ、ある食品業界関係者によると、「塩こうじは爆発的にブームになったあと落ち着いた。その濃淡がかえって“ブームが去った”という印象を色濃くしてしまったのではないか。ある意味、ここからが食卓に常備される調味料となるのかの出発点だろう」と分析する。

このブームにより、塩こうじという調味料の名は知れわたった。そして、今ここからが“真に食生活に根ざす”調味料として、塩こうじが生活に馴染むためのスタートなのではないか。