高まるソフトバンク・ビジョン・ファンドの存在感
その理由は、両者ともに、昨年設立を発表した投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」に関係する人物だからだ。1人はラジーブ・ミスラ氏で、ドイツ銀行などで投資事業などを手掛けた後、2014年にソフトバンクグループの傘下企業に参画。資金調達で多くの実績を残し、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの立ち上げでも責任者として指揮を執ったとされている。
そしてもう1人は、サウジアラビアの政府系ファンドで取締役を務めている、社外取締役のヤシル・アルルマヤン氏。そもそもソフトバンク・ビジョン・ファンドは、サウジアラビアの政府系ファンドと共同で発足させた投資ファンドであり、その関係者が社外取締役に入るということは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドがソフトバンクグループ全体の事業で大きな位置を占めようとしていることを見て取ることができる。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドは今年5月に初回クロージングを完了し、約10.3兆円を集めたと発表している。その出資者にはサウジアラビアの政府系ファンドのほか、アップルやクアルコム、フォックスコンやシャープなどが含まれており、非常に大規模な投資ファンドとなっている。今後同社は大規模な投資や買収は自社が直接負担するのではなく、このファンドを通して実施するとしている。
そして孫氏はこのファンドを通じて、「同志的結合による企業連合を作りたい」とも話している。ソフトバンクグループは、ボーダフォンの日本法人(現在のソフトバンク)やスプリントなどの通信事業に関しては、自社で直接経営に参画し、積極的にテコ入れを図って再建を進めるケースが多く見られた。だが実はそれ以外の事業に関しては、孫氏が直接経営に乗り出すのではなく、経営自体はそれぞれの企業に任せるケースが多い。
買収・出資した企業を系列化して抱え込むのではなく、緩いつながりによって経営の自立性を保つことによってアリババなどの成功を生み、それが急成長の原動力にもなっていることから、ソフトバンク・ビジョン・ファンドでも同様の投資スタイルを世界的に展開し、事業拡大につなげる狙いがあるといえよう。緩いつながりであれば売却などもしやすく、自社が負うリスクが小さいということも、こうした戦略の裏にはあるといえそうだ。