2016年に公開され、「応援上映ブーム」の火付け役となり、20回、30回と何度も劇場に通う熱狂的なファンが続出した劇場版アニメーション『KING OF PRISM by PrettyRhythm』。その待望の新作となる『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』が6月10日より全国公開されている。『KING OF PRISM by PrettyRhythm』には最後に次回予告ともいえるエピローグが盛り込まれていたが、公開当初は新作を制作する予定が立っておらず、まさにファンの熱い応援にあと押しされて今回の新作公開が実現した。

左から西浩子プロデューサー、菱田正和監督

そんな『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』について、今回は菱田正和監督、そしてエイベックス・ピクチャーズの西浩子プロデューサーに話を聞いた。ファンの熱い声援に応えるべく、監督はじめ、スタッフが作品に掛けた思いとは?

新作の制作決定に、プレッシャーよりも安心感が勝った

――前作の『KING OF PRISM by PrettyRhythm』は「応援上映」が話題となり、ファンの熱狂ぶりがさまざまなメディアで報道されていました。それを受け、新作で初めて『キンプリ』に触れる方も多いと思いますが、前作を見ていなくても『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』は楽しめますか?

菱田:もちろん、新しく観にくる方をある程度想定して、ストーリー自体はごくシンプルになるよう作りましたね。(速水)ヒロが挫折から立ち上がり「プリズムキング」を目指すという。それだけ追っていただければ大丈夫ですし、初めて観る方にとってとにかく話がわかりやすくシンプルであることを心がけました。

――昨年の応援上映のファンの熱狂ぶりはすさまじいものがありましたよね。前作はある程度ファンの合いの手や動きを想定して作られたとのことですが、ファンの応援方法で一番予想外だったものは何ですか?

菱田:まずは十字架ですよね。ペンライトで十字架を作っていたのと、あと法月仁のポンポンポンの真似(法月仁がステッキを片手で持って、もう片方の手に3回打ち付ける仕草)ですよ。なんだこれは!?って思っていたら、そのうち今度はペンライトで「仁」て文字を作り始める人が出て来て……。それを見て、ああもう俺はなんて浅はかだったんだろうって(笑)。あの子たちの、あのペンライト芸はちょっと予想できなかった。正直、負けたな……と思いましたね。

――そんなファンの熱狂にあと押しされて今回の新作の製作が決定しましたが、取り掛かった時にプレッシャーはあったのでしょうか?

西:プレッシャーは、正直に言うとそんなになかったですね。本当は感じなきゃいけないんですけど。これで作りたいものを作れる! わーい! みたいな喜びの方が大きくて。

菱田:そもそもプリズムキングカップを描く後編まで作らないと、僕たちが最初に想定したものが見せきれなかったので。プレッシャーというよりは、むしろ前作の続きを見せられる機会を得て、よかったなっていう安心の方が大きかったです。

――新作の制作が決まったのはいつ頃だったのでしょうか?

西:2016年3月に興行収入が2.5億を超えて、この状況であれば次回作を作っても大丈夫ではないか、という話になりました。そこから監督にはプロット作りに取り掛かっていただいたんですが、最終的に会社からの決裁が下りたのは9月で、そのタイミングでやっとファンの方にお知らせする事ができました(2016年9月11日に行われたイベント「KING OF PRISM Over the Rainbow SPECIAL THANKS PARTY!」内で発表)。

菱田:去年の3月9日にやった「サンキュー上映会」のあたりから次を考えておいてくださいと言われて、その月のうちにプロットを出した感じでしたね。

西:本当にお客さんには早く、「新作、作れそうです」っていうのを言いたくて心苦しかったですね。何回も来ていただいていたので……。

キャラクター同士の関係性は、ファンの盛り上がりに影響を受けて

――『KING OF PRISM by PrettyRhythm』の予想外の盛り上がりを受けて、『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』を制作するにあたり、当初の予定と変えた部分はありましたか?

菱田:ほとんど変わってないですね。ただ、エーデルローズの新入生についてもっと知りたい、もっと知りたいというファンの声をよく聞いていたので、最初の想定より新入生についての描写は増えましたね。

――キャラクター同士の関係性が、より強く出ていました。

菱田:ファンの方が、前作を見て、ああじゃないか、こうじゃないかって新入生達について想像してくれたお陰で、こっちのイメージもすごい膨らんで。より深い関係というか、芝居を考えることができましたね。(香賀美)タイガと(十王院)カケルとか、最初はすごく仲が良いと考えていたわけではなかったんですけど、みんなが盛り上げてくれたお陰ですね。

――前作では、(太刀花)ユキノジョウと(西園寺)レオだけが二人でお風呂に入っていましたが、今回は新入生みんなで一緒にお風呂に入っていて、仲の良さを感じました。

菱田:もともと、ユキノジョウとレオはすごく仲が良い設定で、お互いにないものを持ってて、尊敬し合っている関係性だったので、だから前作では二人だけ一緒にお風呂に入ってる描写がありました。けど、新入生全体で見ると、まだ、みんなあの頃は一つにはなってなかったんです。そこに(一条)シンが入ることで、みんな一つになった。なんかいるじゃないですか、その人がいるだけでみんな喋れるんだけど、いなくなった途端、みんな黙っちゃうって人。多分そういう子なんですよシンは。

――シンの存在が新入生達の絆を強くしたんですね。そういえば、以前、シン役の寺島さんにインタビューした際に、「今回はシンとレオの絡みが多くて、監督が僕の気持ちを汲んでくれたのかもしれません、レオくん推しを言い続けた甲斐がありました」とおっしゃっていましたが、その真相は……?

菱田:そこは全然汲んでいませんね!(笑)。まあ、レオが画面の中に入ってくると華やかになるので、多分それで、出番が増えただけだと思います。