『けものフレンズ』や『おそ松さん』が生まれる気風

――そういった経緯で選ばれた作品はどんなものがありますか?

むしろそういうものの方が多いのかも知れないですね。やっぱりウチの担当者が熱い思いで持ってくるものは信じたいと思っているし……日本の人口だって1億人以上いるじゃないですか、その中の1%の人にでも面白いと思ってもらえたら、かなりの人数に楽しんでもらえるわけですよね。だから全員が「これ当たりますよ」と言ってなくても、1人2人でも「可能性があるんです」と言うものは尊重してあげたいと思いますし、そういった中で『おそ松さん』や『けものフレンズ』みたいな作品が生まれたと思っています。番組の成立の経緯ってすごく色々あるので……「漫画が面白いから映像化してみましょう」とか「この監督、このスタッフなら面白いもの作れそうですよ」というアプローチの仕方もありますし、「ゲームが面白いからアニメにしてみたい」とか色々な入り口があると思うんですけど、「面白い」「楽しい」「挑戦してみたい」という気持ちはかなり大切にしていまして、それがテレビ東京らしさだと思います。それで、「テレビ東京だからあの企画が当たったんだ」と世の中の人に思ってもらえているとしたら嬉しいですね。

TVアニメ『おそ松さん』第2期ティザービジュアル

TVアニメ『けものフレンズ』キービジュアル

アニメの広がりは無限大

――なるほど。それでは少し観点が変わりますが、新たな挑戦という点では、あにてれが4月から新スタートしましたね。

テレビ東京は系列局が6局なんですよね。その6局ネットで放送している作品もあれば、東名阪あるいは東京でしか放送してない作品もあります。そんな中、テレビ東京でやっている作品を早く観たいというお客さんが多かったので、その声に応えられる環境を作っていきたいという思いがありました。あとは、放送だけでなくマーチャン(ダイジング)であったりイベントだったり、いろいろなビジネスを考えた時にやっぱり国内で観たい人が観たい時に観られる環境をどうやって作っていくかを考えることが大事でした。そして、製作委員会の皆さんや商品を出しているライセンシーの皆さんにどうやって貢献できるか、ファンの人たちの声にどう応えていくかを考えるという高い志の元に始めました。今は配信サイトが沢山ありますけれども、テレビ東京のアニメチームだからやれるような楽しみ方を模索し、提案していきたい。だから作品を配信して終わりではなく、何か他の要素もどんどん付け加えていきたいなと思っているので、期待していただければと思います。

――イベントと言えば、近年はアニメJAMも開催していらっしゃいます。

アニメって放送や配信を観て終わりではなくて、イベントに行ってみたい、音楽を聴いてみたい、グッズが欲しい、ゲームをやってみたい、皆と共有したい、皆と語り合いたいといった様に広がり方は無限大なので。その無限の広がりにどうやって応えていくかという形の一つですね。アニメってすごく難しいんですけど、楽しいんです。僕、いつも言っているんですけど、テレビの前にいて1人で作品を観ていたとしても、何かSNSに書き込むことで作品や空間を共有できるという、すごい繋がりを持てるジャンルなんです。また、それが国内だけでなく海外、さらに性別だったり世代だったりを超えて皆で共有できる可能性があると思っています。それをどんどん深めていきたいし、その中でテレビ東京として何かできることはないかということを常に考えていきたい。やっぱり「ファンのため、アニメに関わる業界の皆のために何ができるのか」ということがアニメ局の目的と課題で、テーマにもなっています。

長く作品を育てながら常に新しいことに挑戦していたい

――そんな思いでアニメ局という部署が設けられるほどにアニメにかける期待が強いテレビ局ということですね。

アニメは放送する側も放送や配信をして終わりではなくて、その後の様々な展開を含め作品をどう育てていくか考えることが重要になってきます。むしろ放送が終わった後の方がめちゃくちゃ長い。放送が1、2クールだったりとしても、その作品は永遠に生きていくじゃないですか。その間ずっと関わっていくし、「とことんやっていこうよ」という思いで始めている作品なんかは10年、20年続いていくような大きな取り組みなので。テレビ東京の作品でもそうだし、他局さんの作品もそうですけど、自分たちが子供の頃に観ていた作品がまだ続いている、あるいは色々な展開をしているというのって様々あるじゃないですか。だから僕たちも10年前に放送が終わった作品のことでも動いているし、さまざまな作品に色々な関わり方で仕事をしています。本当に仕事の可能性も大きく期間も長いんです。僕たちは世代や時を超えて楽しめる作品になってほしいと思っているし、子供の時に楽しんでもらった作品が、自分が親になった時、子供と一緒に楽しめる作品になってほしい、そういった作品を作りたいという思いがすごくありますね。

――なるほど。

それと、あとはやっぱり挑戦していくということで、例えばこの4月に『スナックワールド』のようなフル3DCGアニメをゴールデンタイムで放送してみたりだとか、世代を超えた作品をやってみたいということで『NARUTO-ナルト-』の子供世代の『BORUTO-ボルト-』は原作漫画が始まって間もない中でアニメをスタートしてみたりしています。あるいは、『アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!』という作品はアニメ枠ですが、女児向けの実写です。そういったように長く続いている作品もありつつ、新しいことにも挑戦して、その中でテレビ東京らしさが出てくれば良いと考えています。『ポケットモンスター』のように20周年になるものもあれば、新しいトライをするものもあれば、漫画原作の実写映画というのもあれば、2.5次元の舞台や音楽イベントも含めて放送だけじゃなく、作品の楽しさをファンの人たちにどうやって提供、提案していくか、そして一緒になって楽しめるかということをすごく考えてやっています。ただ、作品を楽しんでもらえるか、魅力的だと思ってもらえるかがスタート地点であることに変わりはないですね。

■プロフィール
廣部琢之
テレビ東京アニメ局アニメ事業部部長。
1993年、テレビ東京に入社。営業局、映像事業部などを経て、2005年にアニメ事業部へ。担当した作品は『NARUTO-ナルト-』、『テニスの王子様』、『おそ松さん』、『しろくまカフェ』などTVアニメ、映画、舞台、イベントなど多岐にわたる。2016年より現職。

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