それでは、尿路結石を引き起こす原因にはどのようなものがあるのだろうか。辻村医師は次の8つを指摘する。
尿路の通過障害……先天的な尿路奇形や尿路の腫瘍、前立腺肥大症など尿路に何らかの通過障害があると尿路結石になる。そのほかにも腎盂と尿管の移行部が狭い人なども当てはまる。
尿路感染……尿素分解菌の感染による尿のアルカリ化が挙げられる。
飲水の減少……日常的に水をたくさん飲むことは、結石形成の予防になると言われている。水分を摂ると尿量と尿流が多くなり、尿中のいろいろな物質が溶けやすく、流れやすくなるためだ。
バランスの悪い食事……過食や偏食は万病のもとで、尿路結石の原因にもなりうる。特に動物性たんぱくと脂肪を摂り過ぎると尿中カルシウムを増加させ、クエン酸の尿中排出量を低下させる。これが結石形成を促進する原因になる。
また、シュウ酸を豊富に含む食品を多く摂取すると高シュウ酸尿症となり、シュウ酸カルシウム結石の原因になる。ホウレンソウやチョコレート、ナッツ類、タケノコ、紅茶にはシュウ酸が多く含まれているので、注意が必要だ。
高尿酸血症……高尿酸血症は痛風や痛風腎だけではなく、尿酸結石の原因にもなる。プリン体を多く含む食事、特にビールは尿酸値を上昇させるので、飲み過ぎはご法度。さらにビールの飲み過ぎは脱水症状を招くが、この脱水傾向が尿を濃縮させ、結石促進に作用するとも言われている。
副甲状腺機能亢進症……血中カルシウム値が高値を示す病気で、尿路結石の原因になると言われている。
ステロイドホルモンの内服……ステロイドホルモンは骨吸収を増加させ、骨形成を抑制する。すると血中に出たカルシウムとリンが尿中に過剰に排泄され、結石が作られてしまう。
過度なストレス……ストレスがかかると、自律神経の調節が乱れる。交感神経が優位になると心拍数が上昇し、緊張状態になる。そして血管の収縮が起こり、尿酸の排泄が悪くなり、尿酸結石の原因になるのではないかと言われている。
発症の原因は環境因子にあり
食事やストレスなどは、ほかの病気にも通じる原因。やはり、不規則な生活は万病のもとと言えよう。ほかにも、近年の研究結果から尿路結石と動脈硬化の発症には極めて類似点が多く、「尿路結石はメタボリックシンドロームの結果、発症する生活習慣病の一疾患である」との概念が提唱されてきているそうだ。
「メタボリックの因子を予防する生活習慣は、尿路結石の予防にも必要不可欠。暴飲暴食は避け、十分な飲水を心がけ、適度な運動をすることが大事です。食事をしてからすぐ就寝すると、結石ができやすいという説もあります」
なお、尿路結石に遺伝性のものは極めて少ないと言われており、食生活や生活習慣などの環境因子が関与して発症すると考えられている。ただし、家族内に尿路結石の患者がいる人は、いない人より2~3倍も尿路結石になりやすいという報告もある。家族やともに生活している人と一緒に、規則正しい生活スタイルを心がけることが大事だと覚えておこう。