"けものフレンズ現象"は視聴者と同じ目線で
――確かにアプリはあったもののそれを原作とはしなかったですものね。
そうです。それに今回、少し普通のアニメーションとは違うセルルックCGを使っていたので、「どういう動きになるんだろう」という楽しみもありました。
――放送の途中で一気にブレイクしました。その時の感触はいかがでしたか。
僕たちも視聴者の方たちと一緒で、話数が進んでいくほど、『けものフレンズ』の魅力を感じました。第1、2話くらいの時だと、「あのキャラクターデザインの絵がこういう動き方をするんだ」「こういう展開になるんだ」というのを、視聴者と同じようなタイミングで僕たちも感じていて。エピソードが進んでいくごとに「おおお!?」と(笑)。だから、その先の読めなさと想像力を掻き立てるような作り方に僕たちもまんまと引き込まれたし、視聴者と同じ目線で『けものフレンズ』という現象を感じていました。
「皆で色々想像を掻き立てながら作品を観る」楽しみを提供できた
――最終話に近づくと配信サイトも(サーバーが)落ちたりしていましたしね。
これは他の作品でもそうなんですけど、やっぱり今ってSNS等もあるから、拡散のスピード感と大きさが半端じゃないんですよね。世の中の人の「面白い! こんなのあるんだよ!」という情報の広がりが早い。そして広いから、あっという間に社会現象になった。それにキャッチーですよね、『けものフレンズ』というタイトルもそうだし、ロゴやビジュアルも親しみやすい。途中からでも作品に入ってこられるし、逆に途中からあらためて1話が観たくなったりだとか。
――私も友人に"布教"していました(笑)。
また皆さん、深読みしてくれるじゃないですか。「このセリフは~」とか「この動きは~」とか「これはこういう伏線だ」みたいに。
――それでまたSNSで議論が盛り上がったり。
だから、「皆で色々想像を掻き立てながら作品を観る」という楽しみを提供することが、1クールという放送期間中に上手くできたと思っています。放送が終わった後も「こんな面白いものがあったんだよ」と色んなところで語っていただいて。あとは動物園というすごく親しみやすい仲間もいて、そういう方たちもすごく作品を応援していただきました。
新たな課題は「ファンの熱量にどう答えていくか」
――終わってみてからの社内での反応はいかがでしたか。
「すごいね」「すごかったね」という話がまずあります。やっぱり一つでも社会現象になる作品があるとアニメ局の中も盛り上がるし、会社に色々問い合わせがくるので、社内も熱くなりますよね。またテレビ東京でやったなら作品を長くやっていきたい、長く愛される作品に育てていきたいという思いが強くあるので、『けものフレンズ』も1クールの放送は終わったけれど、この盛り上がりを大切にしたいし、ファンの熱量にどう答えていくのかというのが一つの課題としてあるので、今はそういう方にシフトしていますね。『けものフレンズ』は、東名阪でしか地上波の放送がなかったので、もっとたくさんの人に観てもらいたい、触れてもらいたいと思っています。それに、知らない人もまだまだたくさんいると思うので、その人たちにどうやって観てもらうか、知ってもらうかを真剣に考えています。
――高橋雄一社長も定例会見で『けものフレンズ』に触れていらっしゃいましたね。
社長も話題にしましたし、他の部署からも、「『けものフレンズ』ってどういう作品なの?」という声もあれば、「何か一緒にコラボできないの?」みたいに言われますね。例えば、作品は変わってしまいますが『おそ松さん』はドラマ『バイプレイヤーズ ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』とコラボ展開しましたし、そういった「何か面白いことできれば良いね」というムードが力になります。
次回、後編では深夜帯だけでなくテレビ東京で長く放送されている(されてきた)様々なアニメの取り組みについてお伝えしたい。
■プロフィール
廣部琢之
テレビ東京アニメ局アニメ事業部部長。
1993年、テレビ東京に入社。営業局、映像事業部などを経て、2005年にアニメ事業部へ。担当した作品は『NARUTO-ナルト-』、『テニスの王子様』、『おそ松さん』、『しろくまカフェ』などTVアニメ、映画、舞台、イベントなど多岐にわたる。2016年より現職。
(C)けものフレンズプロジェクトA