もともと荒川氏は、オリジナル『ギャバン』『シャリバン』『シャイダー』、そして『怪奇大作戦』(1968年)『帰ってきたウルトラマン』(1971年)『イナズマン』(1973年)『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年)『ジャッカー電撃隊』(1977年)『スパイダーマン』(1978年)『電子戦隊デンジマン』(1980年)など多くの特撮作品で脚本を手がけた脚本家・上原正三氏の大ファンであり、上原氏の描きだす「熱い血の通った人間味のあるヒーロー像」に強い影響を受けている。そのため、上原氏が作り上げた『宇宙刑事』の世界とヒーローの"魂"を現代に継承するにあたって、『シャリバン』ではシシー、『シャイダー』ではタミーと、両作品のヒロインの名前にこだわってみたそうだ。

シシーとは、上原氏が『ウルトラセブン』のために執筆しながら、映像化されなかった幻のエピソード「300年間の復讐」に登場する、アンヌ隊員そっくりの顔を持つ女性宇宙人の名前であり、荒川氏が「日の目を見なかった名前をここで出したい」と考えて名付けたという。またタミーとは、上原氏が"永遠のヒロイン像"として憧れている『野菊の如き君なりき』(1955年)の「民子」を元に、『宇宙刑事ギャバン』の一条寺民子(ギャバンの母親)、『燃えろアタック』(80年)の小野民(主人公ジュンの母親)、『宇宙刑事シャイダー』第32話「僕と君のメロディ」の民子(ゲストヒロイン)などなど、重要なキャラクターにつけることの多い名前だったことを受けて、命名されたものであった。

塚田氏は、ハードボイルドアクションに徹底した『シャリバン』の苦労した点として、「後半部での"ドンデン返し"を前半で悟られぬよう、作劇的に隠すのが大変だった」と語り、中野氏は「三浦君は初めのクールな演技から、クライマックスで熱く感情を燃やすまでの変化をうまく表現しており、カッコよかった」と、三浦の演技を高く評価した。

また『シャリバン』には、犯罪組織ネオマドーのガイラー将軍役で西興一郎、魔怪獣ガードビーストに改造される宇宙刑事ジェンサー役で冨田翔、宇宙の犯罪事件をテレビ画面から伝える女性キャスターに西島未智と、塚田氏がプロデューサーを務めた『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003年)のキャスト陣が印象に残る役どころで出演しているが、これについて塚田氏は「2013年に『忍風戦隊ハリケンジャー10YEARS AFTER』というVシネマを作ったので、翌年のアバレンジャーも……と、日笠(淳)プロデューサーを交えて構想していたのですが、諸事情で作ることが叶わなくなり、ちょっと気持ちがフワフワしていたところだったんです。それで、ちょうど新作Vシネマがあるからということで、3人に声をかけたワケです」と、裏話を明かしてくれた。

ちなみに「宇宙刑事ジェンサー」というネーミングにも、荒川氏の深い『宇宙刑事』愛が込められている。ジェンサーとは、『宇宙刑事シャイダー』のタイトルが確定する以前、シナリオ準備稿に印刷されていた幻のネーミングだったのだ。