AIスピーカーで生活は変わるのか?
Clova WAVEを導入すると、生活はどう変わるのだろうか。まず、これまでスマートフォンで処理していたニュースや天気のチェックといったいくつかのタスクについてはWAVE経由で処理できるようになる。このあたりは競合するグーグルらと変わらない。またメインの機能となる音楽については、LINE MUSICの楽曲が利用できる。個人で作成したプレイリストなどが利用できるかは不明だが、Clovaに曲をリコメンドさせることもできるようだ。
LINEとの連携という点では、自分のアカウントに届いたメッセージの通知なども行えるが、一人暮らしであればともかく、家族と同居している場合、個人向けのメッセージを読み上げられるのは罰ゲームのようなものだ。このあたりはLINE側でも把握しており、個人向けのメッセージは読み上げないよう設定できるほか、家族向けのアカウントを設定するなどの対応策を考えているようだ。
ユニークな機能としては赤外線リモコン機能を備えており、テレビなどの電源オン・オフやチャンネル変更などをWAVEに行わせられるという。スマートホーム制御はライバルも目玉機能として搭載しているが、そもそもスマート家電自体がまだまだ種類も少ないため、実用性としては不十分。ところが赤外線リモコンであれば、TVやエアコン、レコーダーなど多くの機器に適用できる。個人的にはこの機能一つで、他社と比べて実用性が格段に跳ね上がったと思っている。各種リモコンにあふれている日本企業らしい着眼点だと言っていいだろう。
ただ、WAVEを1台を導入したからと言って、急速に日常に変化がもたらされるかというと、そのようなことはない。リモコン機能を中心に音声コマンドの認知は高まるかもしれないが、それ以外の部分はまだまだ「音声で命令し、音声で返す」必要性が低いままだ。LINEを差し置いてClovaが利用できる機能を提供したり、Amazon Alexaの「スキル」のようなプラグインによる機能拡張も当面は利用できないため、サードパーティもClova対応を謳うのはなかなか難しい。
Clovaの目的は家庭へのAIの浸透と、それを元に得られる人々の行動データおよびその解析結果だ。最終的にはファミリーマートとの提携発表で示されたように、顔認識なども使って個人を特定し、アカウントと紐づけた行動データを元に商品のリコメンドなどを行うといったビジネスが考えられているようだ。こうした目的そのものはどこのAIも似たようなものだろうが、後発であるClovaは、まずは利益等を度外視してでも普及を優先していかねばならない。それゆえに「先行販売1万円」というわかりやすい低価格を提示して、1台でも多くの導入を促しているわけだ。果たして目論見通り家庭に浸透できるのか、注目していきたい。