テレワークマネジメントの代表取締役である田澤由利氏は、早くからテレワークに取り組んできた一人だ。現在はテレワークに関する普及啓発や導入支援、ビジネス提案、政策提言などを精力的に行っている。
「テレワークというキーワードが盛り上がっていますが、ここ1年ほどは働き方改革と人材確保の面から注目されています。しかし、テレワーク自体はもっと前から注目されていて、大きなイベントとしては2007年からのテレワーク人口倍増アクションプラン、2011年の東日本大震災をきっかけとした事業継続への注目といったものがありますが、特徴的なのは福利厚生のための施策から、人材確保や生産性向上のためのものに目的が変わってきたことでしょう」と、田澤氏は近年の変化を語る。
田澤由利
株式会社テレワークマネジメント 代表取締役
北海道在住。上智大卒業後、シャープに入社するも、出産と夫の転勤により退職。
その後、在宅でのフリーライター経験を経て、1998年ワイズスタッフ、2008年にテレワークマネジメントを設立。企業へのテレワーク導入支援、国や自治体のテレワーク普及事業等を広く実施している。
内閣府政策コメンテーター。平成27年度情報化促進貢献個人等表彰にて総務大臣賞受賞。
著書に、『テレワークで生き残る!中小企業のためのテレワーク導入・活用術 』(商工 中金経済研究所)、『在宅勤務(テレワーク)が会社を救う』(東洋経済新報社)がある。
企業の取り組み姿勢も、初期は子育て世代の女性等をターゲットに「家にいても働きたい人へ」というような、余裕ある大企業が取り組む福利厚生だった。しかし、近年は労働人口の急速な減少を受け、眠っている人材の活用、移動時間等の無駄を省いた生産性向上といったことが目的になり、多くの企業が取り組まなければならない課題として受け止めているという。
「本気度も高くなっていますし、取り組む企業も増えています。しかし、流れで導入してしまうのは問題です。制度だけをつくっても使われなくなりがちですし、最近問題視されている長時間労働の逃げ道になってしまってはいけません」と田澤氏は警告する。
すべての仕事をテレワーク対応にすべき
テレワークには多くのメリットがある。ワークライフバランスの改善、移動の削減による時間やコストの節約といったものもメリットの1つだ。そして何より、働きたくても家庭環境等によって働くことのできない人に働ける環境を提供できることで、労働力不足の解消につながる。
「労働人口減に対して移民や長時間労働といった形で対応するよりも、やりやすいのがテレワークです。足下にある人材を使える手段なのです」と田澤氏は有用性を強調する。
そうしたメリットを理解した上で企業は導入を試みるわけだが、多くの企業がつまづくポイントがあるという。それは自宅やサテライトオフィスなど、正規のオフィス以外でやらせるべき作業の選別だ。
「自宅でやらせるべき作業がない、やらせる作業を作らなければならないという話がよくあります。しかし、それは間違った考え方です。生産性向上や人材確保といった面で取り組むのであれば、仕事のやり方を変更して、多くの仕事をテレワークでもできるようにすることが大事です」と田澤氏。
使う道具やセキュリティなどの関係で、どうしてもオフィスでなければできない仕事も当然あるだろう。しかし、多くの仕事は工夫次第でテレワークでも行えるようになる。外部からも社内資料を安全に参照できる仕組みやテレビ会議システム、オフィスにいなくても電話応答ができる仕組みなどはICTによって解決できる部分だ。