HVレーシングカーで示す次世代EVの姿
ポルシェが好きな人の大部分はおそらく、「ローナーポルシェ」ではなく、エンジンで走るポルシェを見てファンになったと思うのだが、モーターで走るようになっても、ポルシェでは同社らしいスポーツカーを作り続けられるのだろうか。気になったので七五三木社長に聞いてみると、同氏はエール交換会会場に展示してあったHVレーシングカー「919ハイブリッド」を指し示しつつ、「このクルマが、スポーティーではないと言えるでしょうか」と語り始めた。
ル・マン24時間レースに参戦する「919ハイブリッド」。世界で最も過酷と言われるル・マンは、新たなテクノロジーを試すのに格好の場所だと七五三木社長は語る。レースで真価を証明できた技術は、市販車にも活用していくのがポルシェの考え方だ |
919ハイブリッドは2000ccと市販車並に小さいパワーユニットを積んでいるが、最大で900馬力のパワーを発揮する。七五三木社長によると、そのうちエンジンの出力は500馬力で、残りはモーターによるもの。このモーターが爆発的な力を発揮する加速時は、ほとんどピュアEVのような走りになるそうだ。つまり、モーターで走るポルシェが同社らしさ、つまりはスポーティーなクルマであることをやめることはない、ということなのだろう。
ポルシェは「革新的なクルマづくりのパイオニア」であり、「常に進化と挑戦を続けるブランド」だと七五三木社長は語る。同社の目指す姿は「高効率かつ高性能なクルマを革新的な方法で開発し、モータースポーツでも成功するようなスポーツカーを世に送り出すこと」で、その姿勢はEVでも不変だという。ポルシェらしさが個別のクルマの性能にあるのではなく、その企業姿勢にあるのだとすれば、EVに取り組んでいる現在の状況は、とてもポルシェらしい在り方だと言えるのかもしれない。