第2部はシドからスタート。綾野ましろによる「NEWLOOK」「ideal white」を挟み、Aimerが登場した。「Brave Shine」「RE:I AM」は、本来ラウドなギターとエレクトロなサウンドが組み合ったアグレッシブな曲なのだが、この日は自身とピアノ奏者、2人のみのミニマルなセットでのパフォーマンスとなっていた。ピアノによる最低限の音色に絞った伴奏とAimerの伸びやかな歌声とが合わさり、より引き込まれるアクトであった。

シド

綾野ましろ

Aimer

シークレットゲストのEGOISTは、ステージ画面の映像で登場。春奈るなの伸びやかな歌声が響くステージング、TrySail3人のハツラツとしたパフォーマンスがそれぞれ繰り広げられ、この時点で残り登場予定となっていたのは、ClariSとKalafinaの2組だ。

ソニーミュージックグループとアニソンの繋がりは、多くのミュージシャンやシンガーを生み出してきた。高垣彩陽と戸松遥、2人が所属するスフィアの後輩に当たるTrysailはソニーミュージックグループのミュージックレインに所属し、現在のアニソンシーンを席巻している声優アイドルの嚆矢としてリードしてきた。

一方、ClariS、三月のパンタシア、CHiCO with HoneyWorks、GARNiDELiA、加えてシークレットゲストとして登場したEGOISTのコンポーザー・ryo、彼らは動画サイトで大きなヒットと人気を手に入れたクリエイターとして注目され、アニソンシーンへと食い込んできた次世代を担う存在として若い世代から大きな支持を受けている。また、綾野ましろと春奈るなは本格派アニソンシンガーとしてその道程を歩んでおり、LiSA、Kalafinaはそれぞれ『Angel Beats!』『空の境界』とアニメ作品をきっかけにして結成、デビューした存在だ。

EGOIST

春奈るな

年を経るごとに、ソニーミュージックグループの各レーベルはそれぞれのやり方でアニソンシーンやアニメ作品に参画し、これまでのアニソンシーンやJ-POPシーンにおけるアーティストマネジメントの壁を壊していくかのように、新たな波を作り続けてきたといっても過言ではない。

ClariSとKalafinaの2組は、文字通りその中心に位置するグループであろう。ClariS×GARNiDELiAのコラボから、独特のハーモニーを封じ込めた「ヒトリゴト」「コネクト」が続き、Kalafinaの「Magia」へとつながった流れは、『魔法少女まどか☆マギカ』のOPテーマとEDテーマが続けざまに披露されたというだけではない。ニコニコ動画での人気から注目されたグループと『空の境界』制作の際に結成されたグループ、それぞれ動画サイト発とアニメ作品発という独自の出自をもった2組のユニットが並び合う、この日このアクトでしか起こり得ない奇跡的な並びでもあったのだ。

Kalafina

Hikaruが主旋律をリードし、WakanaとKeikoが声を重ねていった「Magia」で観客を昂ぶらせ、「to the beginning」「アレルヤ」と「One Light」が披露された。Kalafinaがこの日提示してくれたのは、"ボーカルのハーモニーの心地良さがいかに聴くものの心を奪ってしまえるか"だ。3人のハーモニーも見事に重なり「前へと進もう」というメッセージがより鮮やかにきらめき、まるでこの先の挑戦を祈るかのように響く。

シリアスな表情をしたアーティストイメージや曲調が先んじてしまうKalafinaだが、MCでは、この日集まった女子に呼びかけたはずなのに男子の野太い声が四方八方から上がり、困惑するKeikoの姿に客席が和む。そのギャップとボーカルのハーモニーに聞き惚れ、会場中が温かいムードへと変化していった。

T.M.Revolution

後のシークレットゲストにして大トリ、T.M.Revolutionが登場すると、この日一番の大歓声が上がった。実は彼、2週間前に自身の20周年アニバーサリーツアーを同地で終えたばかり。その際は水樹奈々もサプライズで共演し、盛大に自身のキャリアに花を添えていた。そんな公演の直後とあってか、この日のライブアクトはまさに力強さに溢れたものだった。披露された「INVOKE -インヴォーク-」「ignited -イグナイテッド-」「Meteor -ミーティア-」はエレクトロなサウンドが持ち味だが、この日はバンドサウンドに大胆にアレンジされていた。「今夜は全部オレがもらった!」というMCや合唱で観客を煽り続けながら、黒と金を基調とした衣装を次々に脱いでいく。自身のファンだけでなく、アニソンファンに対しても魂を高ぶらせる姿が見てとれた。

「本気で好きなやつが、本気になって作り上げる」と語ったのは、「Meteor -ミーティア-」を披露したあと。また「僕らソニー・ミュージックにまつわる曲、アニメ作品が一堂に集まって、観客みんなと一緒に楽しめる。自分が好きなものに好きなだけ魂を込めて作る、それが良いものになるとずっと信じてやってきました。そうして生まれた流れが、今日までずっとつながってきた。それは、ファンのみんながいなければできなかった。今日は、本当にありがとう!」という熱いメッセージから、この日最後の曲として披露されたのは、20年前にソニーミュージックグループとアニメ作品との繋がりでヒット曲となった『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』のEDテーマであり、T.M.Revolutionにとってもブレイクのきっかけとなった「HEART OF SWORD~夜明け前~」だ。

T.M.Revolution

アンコールの拍手を鳴らす余裕すらなく、登場したミュージシャンとサポートミュージシャン、ステージ演出を担当したさまざまなスタッフクレジットが書かれたフィナーレ映像、それはMUSIC THEATERの言葉通り、音楽と映像によるコラボレーションという意義を深く伝えてくれた。そして、最後に画面にあらわれたメッセージはこうだ。

「すべての『アニメファン』すべての『音楽ファン』に感謝を
これからも『アニメ』と『音楽』のコラボレーションを一緒に体験していきましょう」

生音×生映像を強く結びつける演出を徹底することで、観客をライブ会場に居ながらにしてアニメ作品の物語へと没入させていく手法は、まさに新たなライブ体験であった。ソニーミュージックグループとアニソンの関係が新たなステージへと進んでいくというメッセージが、多くの観客の心に強く刻まれたことだろう。

■プロフィール
草野虹
福島県いわき市生まれ。COOKIE SCENE、Belong Media、MEETIA、音楽だいすきクラブなど様々な音楽サイトに書き手/投稿者として参加、現在はインディーミュージックサイトのindiegrabにインタビュアーとして参画中。幼いころから身近に同人作家兼同人コスプレイヤーの女性がいたことにより、日本のMAGカルチャーにドップリと浸かっており、現在も知り合いには音楽やアニメ好きが多い。水泳や野球などのスポーツを部活動やサークルを通じて経験してきたこともあり、体育会系音楽オタクとして日々過ごしているアニメも大好きな男。