日帰り施設と足湯で気軽に湯河原温泉を
湯河原温泉で気軽に日帰り入浴ができるのが、町営の日帰り温泉施設「こごめの湯」。温泉街中心部の万葉公園に隣接した場所にあり、駐車場も完備してるので、車でも気軽に立ち寄れる。
他にも民営の日帰り温泉施設として、ゆとろ嵯峨沢の湯、湯河原ラドンセンター(ホテル城山)、ニューウェルシティ湯河原のいずみの湯があるが、いずれも入浴料金が1,000円以上で、湯河原温泉の高級イメージに拍車をかけている。一方、万葉公園の奥には、巨大な有料足湯施設「独歩の湯」がある。湯河原に関する著作を多く残した「国木田独歩」が名前の由来だ。
●information
湯河原温泉「こごめの湯」
住所: 神奈川県湯河原町宮上562-6
アクセス: JR東海道本線 湯河原駅から奥湯河原方面行きバスで約15分。公園入口下車徒歩3分
湯河原を代表する老舗旅館で小説家気分
湯河原温泉には庶民的な宿も多いが老舗旅館も多く、飲食店の銘店として「ミシュランガイド横浜・川崎・湘南」に掲載され、星を獲得した料理自慢の宿もある。しかし、そうした宿は正真正銘の高級宿で、宿泊料金はひとり3万円以上もする。
庶民的な宿と高級宿に二極分化して、中間の価格帯の宿を探すのが難しい湯河原温泉の中で、戦前の創業の老舗旅館でありながら、2万円台から宿泊できるのが「加満田」だ。
よく筆の遅い小説家を旅館に「缶詰」にすると言うが、昭和22(1947)年に編集者でもあった小説家の宇野千代が、文芸評論家の小林秀雄を「加満田」缶詰にしたのが始まり。文人墨客や大物財界人にも愛された、老舗中の老舗だ。
奥湯河原の林に囲まれた、非常に落ち着くロケーションにあり、ふたりで篭(こ)もるのにも最適な宿。自家源泉を2本所有しており、2つの内湯と2つの無料貸切露天風呂に加え、客室の風呂まで温泉だ。
湯河原温泉の老舗らしく落ち着きと、ある種の渋さを感じる加満田。宿泊料もリーズナブルなので、料理に期待できないと思ったら大間違い。流石は、文人墨客や大物財界人の舌を満足させてきた宿だと感服する。
特に感激するのが、盛り付けの繊細さだ。舌が肥えていない分、筆者は料理を目で楽しむのが好きなのだが、あまりにも繊細な盛り付けを見て、食べずにずっと眺めていたいと思うほどであった。
●information
奥湯河原温泉「加満田」
住所: 神奈川県湯河原町宮上784
アクセス: JR東海道本線 湯河原駅から奥湯河原方面行きバスで約20分。終点下車徒歩2分
湯河原温泉もまた、紅葉の名所
今回は湯河原温泉の初夏の魅力を中心に紹介したが、東京からも非常に近い温泉地であり、伊豆方面に行く際にも通るので、一年中いつでも行ける温泉地だ。よって、秋と春の魅力についても、併せて紹介したい。
神奈川県の紅葉名所と言えば箱根だが、湯河原温泉も箱根の山裾に位置しており、紅葉の名所だ。特に奥湯河原の紅葉が有名だが、温泉街中心部の万葉公園や町立美術館の庭園でも、美しい紅葉を楽しめる。
町立湯河原美術館は有料の施設だが、紅葉時期の庭園は無料で開放しており、見頃の夜間にはライトアップも実施する。駐車場も無料なので、是非立ち寄りたいイベントだ。
●information
町立湯河原美術館
住所: 神奈川県湯河原町宮上623-1
アクセス: JR東海道本線 湯河原駅から奥湯河原方面行きバスで約15分。美術館前下車すぐ
極めて貴重な「夜梅」のライトアップは必見
湯河原温泉の四季のイベントの中で、一番でユニークだと感じるのが春の観梅。幕山公園とも呼ばれる湯河原梅林で、梅祭り「梅の宴」が大規模に開催される。熱海梅園のように梅の名所は各地にあるが、夜桜のように梅をライトアップする著名な名所は、関東周辺では、他には偕楽園しかない。
しかも、昼間は駐車場も入園も有料だが、夜間は完全に無料なのだから、一度は見ておきたい。極めて貴重な「夜梅」のライトアップは、まさに必見だ。
●information
湯河原梅林(幕山公園)「梅の宴」
住所: 神奈川県湯河原町鍛冶屋951-1
アクセス: JR東海道本線 湯河原駅から臨時直通バスを利用(「梅の宴」期間中のみ運行)
ホタルやサツキの絶景を楽しみ、老舗旅館の絶品料理や格安干物を満喫する湯河原温泉の魅力、いかがだっただろうか。今回は、四季のイベントの中でも代表的なものだけを紹介したが、紅葉の名所は新緑の名所でもあり、梅雨の時期の緑は一層美しさを増す。
また、夏休み期間中には湯河原海水浴場や海浜公園プールもオープンする。新幹線の駅がないせいか箱根や熱海と比較すると、リーズナブルと感じる宿泊料金の宿が多く、四季折々に何度でも利用したい温泉地だ。
筆者プロフィール: 藤田聡
温泉研究家、オールアバウト「温泉」「紅葉スポット」ガイド。温泉旅行検定試験で2年連続日本一になり、検定協会から「温泉旅行博士」の称号を授与される。温泉地を中心に周辺観光地の取材・撮影を行い、海外旅行にも決して負けない、国内旅行の奥深い魅力をメディアで発信中。紅葉や一本桜、夜景や四季の花などの絶景スポットにも精通している。