100円PROJECTは続くのか

こうした素材調達、加工工程のあり方は、スシロー独自の仕様であり、社内では"スシロースペック"と呼ぶという。つまり、100円PROJECTを実現するには、スシロースペックを受け入れてもらえる協力先が不可欠で探すのが大変。使用する素材はその多くが"天然"ということもあり、安定供給も難しい。多くの困難を伴うのが100円PROJECTなのだ。

苦労の甲斐あってか、今のところスシローの努力は報われているようだ。スシローの2017年9月期上半期は、売上が前年比8.1%増の768億円、純利益(調整後)は同18.6%の33億円と好調。水留浩一社長も「堅調に業績が推移した。そのエンジンになった」と100円PROJECTを評価する。さらに「スシローが今、一番力を入れているのが調達。本当に良いネタを100円で提供し続けるために、必死になって調達強化を進めている。バイヤーも増員した」などと話す。いかに100円PROJECTが重要なポジションとなっているかがわかる発言だ。

この先についても「プロジェクトはある意味、半永久的というか、スシローのど真ん中の取り組み。名前は変わるかもしれないが、ずっと続けて行くと思う」という。

課題は供給

しかし、先に述べたように、供給の難しさが横たわる。素材の調達を担う執行役員 商品本部長 堀江陽氏にこんな言葉をかけてみた。

「100円PROJECTで、社長が半永久的に続けたいと言っているんですが……」と筆者が堀江氏に話しかけ、コメントを求めたときの一瞬の反応が忘れられない。

一瞬止まった堀江氏の表情。それが何を意味するのは本人以外にわからない。その後に話してくれたのは「基本的に天然魚メインの取り組み。難しさは計画性」と調達、安定供給、定期的な商品提供の困難さだった。味、客足、業績を一手に引き受けるスシローの商品本部。100円PROJECTの継続には、言葉では表せないほどの努力があることを感じさせてくれた。