このところ、タレントがバラエティ番組で、芸能界の裏事情や過去の恋愛など、通常なら墓場まで持っていくような話を披露するシーンが増えている。とりわけ多いのが、収入にまつわる話だ。

山田邦子は「1億円」、武井壮は「3500万円」、内山信二は「3000万円」と最高月収を明かし、トレンディエンジェル・斎藤司は「1015万円」、メイプル超合金・カズレーザーは「221万円」と、現在の月収を披露した。新旧のタレントが、そろって月収を明かしているのはなぜなのか――。

スタッフが好む数字を伴う話題

多くの番組で月収を暴露しているトレンディエンジェルの斎藤司

最大の理由は、番組制作の方法によるものだろう。大半のバラエティ番組は「タレントに事前アンケートを依頼し、それをもとに打ち合わせをしながら話を広げ、スタッフが話し合いながら台本を作る」という過程をへて収録が行われる。

しかし、よほどのトーク巧者でなければそうそう爆笑を誘えないため、必然的にスタッフもタレント本人も、お金、恋愛、ウワサや悪口など、下世話なテーマに話題を移す。特にお金、体重、交際人数のような具体的な数字を伴う話題は、ながら見の多い現在の視聴者も、トピックス性に注目するメディアも反応しやすいため、スタッフが好んで採用する。

中でも"お金"は「1つあたりいくら」「このボリュームでいくら」「こうすればいくら安くなる」などと、さまざまな取り上げ方をされるのだが、タレントにとっては月収が"お金トーク"の入口となる。

また、月収のトークは、放送前のCMに「月収○万円」というシーンを組み込み、テレビ誌や放送当日のネット記事に「○○が驚きの最高月収を披露」と書かれるなど、PR面での強みを狙っているのも間違いない。ただ、「視聴者はタレントの月収に興味を持っている」というスタッフの思い込みが強すぎるのも、また事実だ。

トーク力がなければインパクト勝負

タレントたちは、自ら月収を公表したいわけではない。「求められているのなら応えたい」「話の構成で引きつけられないから、インパクトの強いフレーズで勝負しよう」という気持ちがあるだけだ。

2000年代に入ってから10~20人ものタレントを大量出演させるバラエティ番組が増えた結果、トーク力にバラつきがある上に、1人当たりのコメント時間が短くなった。必然的にスタッフは「トーク力の低いタレントは、短いコメントでインパクトを残してもらおう」と考える。

それが一発屋タレントなら、なおのこと。相次ぐ月収の公開は、「毎年、一発屋タレントを量産してきた二次的な影響が出ている」と言ってもいいだろう。一発屋タレントは数百人いるとも言われ、スタッフも番組の中で都合よく扱えることもあって、この流れはしばらく続くのではないか。

余談だが、知り合いのある芸人が「事務所から『月収の話はするな』と言われている。金額の問題ではなく、そういうトークに走ると芸が磨かれないから」と話してくれた。確かに、売れていない若手芸人が「先月の給料は1,000円でした」などと明かすシーンをよく見かけるが、たいてい「面白くないから仕方ないでしょ」と思ってしまう。その意味で月収のトークは、一度でも売れたタレントの特権なのかもしれない。