「レジリエンス」という言葉をご存じだろうか? もともとは物理学用語でバネの弾力・弾性を意味する言葉だが、1980年代頃から「逆境を跳ね返す力、うまく対処する力」として心理学や精神医学など幅広い領域で用いられている。我が国では、東日本大震災後に一般に広く知られるようになった。
ストレス社会と呼ばれる昨今、大手企業の若手社員が長時間労働のストレスで自ら命を絶った例に代表されるように、就労問題による精神疾患や自殺が社会問題となっている。ストレスに負けずに現代社会を生き抜くにはどうすべきか? 今回は労働者の現状とレジリエンスに焦点を当てて解説する。
労災の現状
厚生労働省の平成26年度「過労死等の労災補償状況」によると、労災の認定請求件数と決定件数ともに増加傾向であり、いずれも10代から30代の若年者が約半数を占める。労災によるストレスは、長時間労働とそれに伴う睡眠不足が最大の要因である。
同報告によると、毎月100時間以上の残業をしていた場合は労災と認められるケースが多く、これは残業を含んで週に65時間以上働くことに相当する。なお、週60時間以上労働している若年労働者は約10%であった。この中で週に65時間以上労働している若年労働者も多いと考えられるため、約10%中のかなりの割合が潜在的な労災予備軍であると言える。
レジリエンスが高い人の特徴
長時間労働などの過酷な経験を同じようにしていても、人によって逆境を跳ね返す力は異なり、ストレスの感じ方も人による。レジリエンスが高い人の特徴として、自己効力感や自己肯定感、ユーモア、忍耐強さ、楽観主義、創造性、寛大さなどを有していることがさまざまな研究によって明らかにされてきた。
大切なものを失って悲嘆にくれることや、将来のリスクを予測して不安に感じること、不当な扱いを受けて怒りを感じることは、それ自体は自然な現象である。こうしたマイナスな感情を持ちながらもそれと向き合い、自助努力を重ねて意味を見出していける人はレジリエンスが高いと言える。