au HOMEに残る不透明さ
これがau HOMEの概要だが、不透明な部分は多い。まず、対象者がau ひかりユーザーに限定されるのか、という点だ。
これについてはKDDIの田中孝司社長は「当初はau ひかりだけですが順次拡大していきます。auだけですと、市場も当然制限されますので」としている。KDDI傘下のビッグローブが展開するビッグローブ光も対象にするのは理解しやすいが、競合他社の固定通信サービスまで広げるのかはわからない。
次にグーグルとの提携について。Google アシスタントの長所は、パーソナルな情報(好きな食べ物・好きな場所など)をアシスタントが覚え、カレンダーなどの情報をもとに、ユーザーが今、置かれた状況を理解し、会話の文脈を読み取りながら受け答えしてくれる音声アシスタントだ。
Google アシスタントと連携することで、自宅のドアの閉め忘れなどを聞くことができるようになるだろうが、それ自体は専用アプリから確認できるはずで、アシスタントの役割が不明だ。現段階において、Google アシスタントと連携することで、どんな利便性の向上が見込まれるのかはわからない。
そして、今夏以降は、ホームIoTにおけるハブ的な存在として期待されるGoogle Homeが国内で発売される。KDDIはグーグルと提携するわけだが、このあたりの調整がどうなるのかも不明だ。
最後は、マーケットが存在するかだ。家電を制御するデバイスはすでにいくつか存在している。しかし、それがトレンド化したことはなく、タイミングが早すぎるかもしれない。
KDDIの強みとビジネスの狙い
とはいえ、この部分はKDDIの本領が発揮できる部分になる。KDDIには、全国に張り巡らされた販売店があり、サポート力がある。これまでは知る人ぞ知る製品だった家電制御デバイスが人目に触れるようになり、機器の設置も不安なくサポートしてくれそうだ。
KDDIもそれを理解してか、「目指したのは、安価・手軽に始められるホームIoT」としている。その具体的な施策として、訪問サポートを用意。アフターサポートも用意しており、サービスや設置方法に関する問合せにも対応する。これらは、ホームIoTの本格普及に向けての役割を期待できるところだ。
最後に、KDDIにとってもビジネス的な意味についても触れておきたい。基本料と機器の販売収入だけではなく、今回の取り組みは別の側面もありそうだ。
現時点において、各大手キャリアの基本戦略として、MVNOへの流出をいかに防ぐかが焦点になっている。その手段の一つとして、固定回線が活用されている。そこからすると、今回のau HOMEは固定回線のau ひかりへのテコ入れという側面もあるはずだ。現段階でのau HOMEは未知数の高さばかりが目についてしまう。成否はなんともいえないが、成功すれば、大きな果実をKDDIは手にできそうだ。