まとめと考察 - HDDと組み合わせれば、確かにSSDに迫る速度

このように、Optane Memoryをキャッシュとして用いることで、HDDの性能は確かに向上することがはっきりした。とはいえ速度の点で言えば、素直にSSDを用いたほうがほとんどのシーンでより速く、とくにNVMe SSDが最速である。

Optane Memoryが効いてくるのは、SSDでは到底実現し得ない容量のHDDを組み合わせた場合だろう。2TB超のSSDはとくに高価なので、2TB超のHDDをシステムドライブとして利用したいという場合は、その高速化手段としてOptane Memoryが選択肢に挙がるだろう。

とはいえ、追加コストが生じることは事実であり、徹底的にコストを絞るようなニーズにOptane Memoryがマッチするのかどうかは疑問だ。HDDと言えばビジネスPCで採用されることが多いが、そうしたニーズでは大量一括購入が多く、コスト重視でパフォーマンス軽視の傾向がより強いだろう。ここが課題だといえる。

また、現状では第7世代Coreプロセッサと200シリーズチップセット、OSやシステムドライブであることなど、要件が多い。日本市場においては、SSDの普及率が高く、HDDはPC本体よりはNASや外付けHDDなどにニーズの中心がシフトしつつある。

例えばNASのように、Atomなどの非Coreプロセッサ環境、Linux OSに対応したり、外付けHDDのように組み込みにも対応できれば面白いことになりそうだ。あるいはSSHDのようにHDDに組み込んでしまってもいいだろう。基本的には3D XPoint自体の大容量化が進み、NANDフラッシュメモリの代替となるのが本来の道筋と思われるが、OptaneとHDDというこの方向での発展にも期待したい。

最後に、Optane Memoryは、必ずしもキャッシュとして利用しなければならないというものではない。アプリケーションによっては特定のドライブをキャッシュに指定することが可能なので、例えばPhotoshopなどではOptane Memoryをキャッシュに指定し、16GBないし32GBのキャッシュとして利用できそうだ。 NANDフラッシュメモリと比較して十分な書き換え回数を実現できるOptane Memoryだから、NAND SSDをキャッシュにする場合よりは安心できる。

また、最近では複数のM.2スロットを搭載するハイエンドマザーボードも多い。ならばOptane Memoryの32GB版を複数枚、RAID 0構成すれば64GB以上になるので、ギリギリだがOSをインストールすることも可能だろう。

課題は確かにあるし、追加コストがかかるところも難点だが、手ごろな価格でHDDが高速化でき、それも4TBや10TBといった超大容量HDDをシステムドライブにできる点は面白い。そしてストレージとして通常通り使っても構わないわけで、アイデア次第で遊べるストレージになりそうだ。