米国をはじめとする先進国のiPhone SEユーザーは、もしかしたら、「Appleにとって、より大切で理想的な顧客」かもしれない。
前述の通り、4インチサイズは、4.7インチ、あるいは5.5インチのスマートフォンに比べて、画面サイズは非常に小さく感じる。その大きさでのビデオ視聴は、やはり満足できるものではない。iPhone SEを選択するユーザーは、画面が小さいことを理解しているので、そこに不満を感じないという可能性もある。しかし、チョイスに別の理由があるとすれば、それは複数のデバイスを使い分けているということだ。
iPhone SEをメインのスマートフォンに使っているユーザーが、積極的にビデオ視聴をしなければ、使用体験としてはマイナスポイントにならないのだ。スマートフォンは最小限の手に馴染むサイズで、それ以外の大画面が必要な場合はタブレットで、という使い分けが存在するなら、iPhone SEが大画面である必要がないのである。
ライフスタイルの中で、オンラインビデオの需要は高まっているが、ビデオを見ているデバイスが、iPhone SE以外で、パソコンやタブレットを上手く使い分けられるなら、画面サイズの大きさは問題にならない。そういう使い方はしないという割りきりができればいいというだけの話なのだ。
Appleは複数のデバイスを連携させて利用できるようにする環境を、iOS、macOS、tvOSで整えてきた。iPhoneにインストールしたアプリは自動的にtvOSにもダウンロードされるし、Macで編集していた文書やメールをiPhoneやiPadに引き継ぐことも可能になっている。ビデオももちろんデバイス間を跨いで視聴できる。
Appleのビジネスの中心はデバイス販売であることから、1人が複数のデバイスを活用してくれることが理想的であると言える。iPhone SEのユーザーはおそらく、MacやiPadを連携させて使ってくれる可能性が高いため、Appleとしては、大切にしたい顧客という位置づけになるかもしれない。