一時金として受け取るメリット・デメリット

一方、退職金を一時金として受け取ったケースはどうでしょうか。退職一時金の場合、大きな税制優遇枠が設けられており、以下の計算式で導き出された結果が、非課税となる退職金額の上限となります。

・勤続年数20年以下 40万円×(勤続年数)
・勤続年数20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

例えば、勤続38年の人が60歳で定年を迎えて退職一時金を受け取る場合、退職所得控除の上限は2,060万円となる計算です。これを超えた分も、課税対象は2分の1と定められているため、税負担はかなり軽くなります。仮に2,000万円の退職一時金をもらったとしたら、その全額が非課税となるわけです。一時金の方が、勤続年数に比例して非課税枠が増えていく仕組みのため、税制的に見ればメリットは大きくなります。

ただし、一時金で受け取る場合にも注意があります。それは、一括で大きなお金を手にすると、短期間に使い過ぎてしまう危険があることです。子供に住宅資金の援助をし過ぎる、無計画に旅行やレジャーを満喫するなど、「少しくらいいいだろう」と油断して老後資金が足りなくなることがないよう、気を付けましょう。

では、総合的に見て、年金と一時金では、どちらの方法で受け取るのが良いのでしょうか。税金の負担は一時金が少ないものの、年金で受け取る場合は利息が上積みされていくため、どちらの方が絶対に得と決めることはできません。年金額や運用利率、社会保険料などを考慮して計算し、自身のライフプランとしてどちらがより最適であるか考えることが必要になります。

企業によっては退職金の受け取り方が決まっていることもあります。複数の中から選べる場合は、年金と一時金のほか、「年金+一時金」も候補に入れながら、自身にとってはどれがベストなのか見極めてみましょう。なお、「年金+一時金」を選択すると、その比率を細かく設定することができる場合もあります。老後のプランを立てるとともに、退職金をどう受け取るかも同時に考えていきましょう。

筆者プロフィール:武藤貴子
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント
会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。FP Cafe登録FP。